会社更生法 第32条(保全管理人の権限)
クイックジャンプ
- 保全管理命令が発せられたときは、開始前会社の事業の経営並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属する。ただし、保全管理人が開始前会社の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
- 2.前項ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
- 3.第七十二条第二項及び第三項の規定は、保全管理人について準用する。
この条文の基本情報
保全管理人の権限とは何ですか?
定義保全管理人の権限とは、会社更生法第32条に定められた規定で、「保全管理命令が発せられたときは、開始前会社の事業の経営並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第32条(保全管理人の権限)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第32条の条文原文は「保全管理命令が発せられたときは、開始前会社の事業の経営並びに財産(日本国内にあるかどうかを問わない。」で始まります。
- 会社更生法第32条は第三款に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第32条の前の条は会社更生法第31条です。
- 会社更生法第32条の次の条は会社更生法第33条です。
- 会社更生法第32条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第32条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第32条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/32
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法32条は、保全管理命令が出ると会社の経営・財産の管理処分権が保全管理人に専属すると定める。常務外の行為には裁判所の許可が必要で、許可なき行為は無効となる。
Q · 取引先が保全管理命令を受けたら、いつもの社長と結んだ契約はどうなるの?
社長は契約権限を失い、窓口は保全管理人に移ります
会社更生法32条により、保全管理命令が出ると会社の事業経営と財産の管理・処分権は保全管理人に専属します。社長など旧経営陣は権限を失い、取引の窓口は保全管理人に切り替わります。保全管理人でも、工場売却や多額の借入れなど常務に属しない行為には裁判所の許可が必要で、許可なくした行為は無効です。ただし、その事情を知らない善意の第三者には無効を対抗できないため、命令を知らずに取引した相手は原則として保護されます。
解説
取引先の大企業が経営危機に陥り、裁判所が「保全管理命令」を出した。この瞬間、あなたがいつも商談していたその会社の社長や取締役は、会社の財産を動かす権限を失う。事業の経営も、財産の管理も処分も、すべて裁判所が選んだ保全管理人に専属する。専属とは、ほかの誰も口を出せないという意味だ。さらに保全管理人ですら、日常業務(常務)の枠を超える行為、たとえば工場の売却や多額の借入れをするには、いちいち裁判所の許可が要る。許可なしでやった行為は無効。ただし、その事情を知らずに取引した善意の第三者には、無効を主張できない。つまりこの一条は、危機に瀕した会社と取引する全員に「誰がハンコを押す権限を持つのか」を突きつける。あなたが昨日サインした契約書、その相手の権限を確認したか。
法的な位置づけ
会社更生法32条は、保全管理命令の効果として、開始前会社の事業経営ならびに財産の管理および処分をする権利を保全管理人に専属させる規定である。保全管理人が会社の常務に属しない行為をするには裁判所の許可を要し、許可を欠く行為は無効となる。ただし、その無効は善意の第三者に対抗することができない。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.官報・登記で命令の発令日と保全管理人を特定する 取引先が保全管理命令を受けたら、まず官報の公告と商業登記で命令の発令日、保全管理人の氏名・連絡先を確認する。社長ではなく保全管理人が権限者であることを前提に動く
- 2.自分の取引が常務に属するか常務外かを切り分ける 進行中の契約・取引が会社の日常業務(常務)の範囲か、それを超える常務外行為かを判定する。常務なら原則有効、常務外なら裁判所の許可の有無を確認する必要がある
- 3.常務外取引は裁判所の許可を書面で確認する 高額資産の購入や大口取引など常務外の取引をするなら、保全管理人に裁判所の許可を得た取引かを書面で確認させる。許可の証跡を残すことで、後日の無効主張に対し善意で守られる側に回れる
- 4.売掛金を保全管理人に届け出て回収順位を確認する 未回収の売掛金は保全管理人に届け出て、共益債権として優先弁済を受けられるか、更生債権として手続に従うかの扱いと回収順位を確認する。記録を残し時効進行にも注意する
よくある質問 AI による整理
Q1保全管理命令とは何ですか?
更生手続が始まる前に、裁判所が会社の財産散逸を防ぐため発する暫定処分です。命令が出ると会社の管理処分権が保全管理人に移ります(会社更生法30条・32条)。
Q2保全管理人の権限はどこまでですか?
事業の経営と財産の管理・処分権が専属します。ただし常務に属しない行為(多額の借入れ、重要資産の売却等)には裁判所の許可が必要です(32条1項ただし書)。
Q3常務に属しない行為とは何ですか?
会社の日常業務の範囲を超える行為を指します。具体的には事業規模や取引慣行から個別判断され、工場売却や大口借入れなどが典型例です。許可なしでは無効になります。
Q4保全管理命令が出た会社の社長は何ができますか?
管理処分権を失うため、会社財産に関する契約・支払い・処分はできません。窓口は保全管理人に移ります。勝手な契約は無権限行為となり無効リスクを負います。
Q5会社更生法と民事再生法の違いは何ですか?
会社更生は株式会社のみ対象で管財人が経営を引き継ぎます。民事再生は法人個人を問わず原則として旧経営陣が経営を続ける(DIP 型)点が大きく異なります。
Q6保全管理命令はいつまで続きますか?
発令時から効力を生じ、更生手続開始の決定または申立てについての決定があるまで継続します(会社更生法30条)。その後は管財人の権限に引き継がれます。
Q7保全管理命令は登記や公告されますか?
保全管理命令は登記され、官報にも公告されます。取引先の経営不安を聞いたら、官報や商業登記で命令の有無と保全管理人を確認できます。
Q8取引先が保全管理命令を受けたら売掛金は回収できますか?
窓口を保全管理人に切り替え、債権を届け出ます。手続開始後は共益債権か更生債権かで回収順位が変わるため、扱いを保全管理人に確認することが重要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1取引先が保全管理命令を受けたら、もう商品を納品しちゃダメなんですか?
日常の取引(常務)であれば保全管理人の下で継続できますし、事業の維持のために取引を望まれることも多いです。ただし窓口は社長ではなく保全管理人に切り替わります(会社更生法32条1項)。実務のポイント:保全管理命令の目的は事業の継続なので、優良な取引先はむしろ取引の維持を求められる。命令を聞いて慌てて取引を切ると、かえって自社の売上を失う。まず保全管理人に継続の意向と決済方法を直接確認するのが正解
Q2許可なしの取引は無効って、知らずに買った私まで損するんですか?
いいえ、その事情を知らなかった善意の第三者には無効を主張できません(会社更生法32条2項ただし書)。あなたが命令の存在を知らずに取引したなら、原則として保護されます。実務のポイント:争点は善意の立証です。官報に公告が出ていても、それだけで悪意とされるわけではない。ただし取引額が大きいほど裁判所は調査の度合いを厳しく見る傾向があるので、高額取引では相手の登記を確認した記録を残しておくと善意の証拠になる
Q3保全管理人と管財人って何が違うんですか?
保全管理人は更生手続が始まる前の暫定措置で、財産を保全するために置かれます。管財人は更生手続開始決定の後に事業再建を主導します(会社更生法72条)。32条3項は管財人の権限規定の一部を保全管理人に準用しています。実務のポイント:保全管理命令が出る会社は、旧経営陣の財産管理が不適切だと裁判所に判断された深刻なケースが多い。命令の有無は、その会社の危機の深さを測るシグナルとして読める
間違えやすい点 AI による整理
- 「保全管理命令はまだ倒産が確定する前の話だから、取引に影響しない」と考えるのは、問いの立て方そのものが間違っている。確定を待つまでもなく、命令が出た瞬間から管理処分権は保全管理人へ移転する。待つ発想がそもそも危ない
- 「保全管理人の許可なくした取引は全部無効になる」と思われがちだが、無効になるのは常務に属しない行為だけ。日常業務の範囲の取引はそのまま有効に動く。線引きは常務か否かにある
- あなたから見れば「いつもの担当者と結んだ普通の契約」でも、法律から見れば「管理処分権を失った者がした無権限行為」。この落差に気付かず履行を続けると、代金も商品も回収できない泥沼に落ちる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 権限が専属する者 | 保全管理人(32条、更生手続開始前の暫定) | 管財人(72条、更生手続開始後の再建主導) 原則は旧経営陣=DIP(民事再生法、監督委員が監督) |
| 発生する時点 | 保全管理命令の発令時から開始決定まで | 更生手続開始の決定後 再生手続開始の決定後 |
| 常務外行為の扱い | 裁判所の許可が必要、許可なき行為は無効 | 裁判所の許可を要する行為を法・決定で定める 監督委員の同意を要する行為を裁判所が指定 |
| 事業経営権 | 保全管理人に専属(旧経営陣は喪失) | 管財人に専属 原則として旧経営陣が継続 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の公司重整では、裁判所が重整前に保全処分を命じ、重整人が会社の業務経営と財産管理を担う。重要行為に裁判所の関与を要する点で日本の保全管理人と機能的に近い
韓国の債務者回生法も、回生手続開始前に保全管理人を選任し管理処分権を専属させる。日本の会社更生法を強く参照した立法経緯があり構造が類似する
ドイツは倒産手続開始前に仮の倒産管財人を選任し、処分権の移転や同意権の留保を裁判所が定める。常務外行為への裁判所関与という発想に通じる
米国は原則として占有債務者(DIP)が経営を続け、不正等がある場合に管財人を選任する。日本の保全管理が原則的に旧経営陣の権限を奪う点と対照的
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先に大口の機械を納品する契約を社長と結んだ。納品直前にその会社へ保全管理命令。社長が署名した契約が「常務外」と判断されれば、許可なき行為として無効になりうる。あなたは代金を回収できるのか、保全管理人に確認しないと売掛金が宙に浮く
- もしあなたの会社が更生申立てをして保全管理命令を受けたら? その日から社長であるあなたが結ぶ契約はすべて権限外になる。明日の支払いも、来週の発注も、すべて保全管理人を通す。残された時間で引き継ぎを整えないと事業が止まる
- あなたが中古設備を安く買った相手が、実は保全管理命令下の会社で、保全管理人が裁判所の許可を取らずに売ったものだった。あなたが事情を知らなければ、その取引は守られる。だが知っていたなら、設備を返す羽目になる
- 銀行員のあなたが融資を実行した翌週、借り手に保全管理命令。社長との約束は無効かもしれない。担保設定の有効性を今すぐ洗い直す
- 友人が「取引先が会社更生だか何だかになったらしい、今ある契約どうなるの」と相談してきた。あなたは「相手が保全管理命令を受けたなら、まず誰に権限があるかを確認しろ」と即答できる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相手が保全管理命令を受けたら、官報・登記で命令の発令日と保全管理人を特定する2. 自分の契約が常務に属する行為か常務外かを切り分ける、日常業務なら原則有効3. 常務外で許可なくされた取引なら、自分が善意の第三者か(命令を知らなかったか)を証拠で固める4. 売掛金は保全管理人に届け出て、共益債権か更生債権かの扱いと回収順位を確認する
訴えられた側:1. 保全管理人なら、常務外の行為は必ず事前に裁判所の許可を取る、許可なき行為は無効リスクを抱える2. 旧経営陣(社長等)は命令後に管理処分権を失っているので、勝手な契約・支払い・財産処分をしない3. 相手が善意を主張してきたら、相手が命令を知っていた事情(通知・報道・取引履歴)を立証して対抗する4. 準用される72条2項・3項により裁判所が個別に許可を要する行為を定めることがあるので、許可対象の範囲を確認する
時効(請求できる期限):保全管理命令の効力は発令時から、更生手続開始の決定または申立てについての決定があるまで継続する(会社更生法30条)。無効主張や善意の抗弁に固有の時効はないが、関連する債権の請求は一般消滅時効(民法166条、権利行使可能を知った時から5年または権利行使可能時から10年)に服する(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:保全管理命令により管理処分権は保全管理人に専属し、旧経営陣の権限は失われる。常務外行為に裁判所の許可を課すのは財産の早期保全のためであり、許可なき行為を無効としつつ善意の第三者には対抗できないとすることで、保全の徹底と取引の安全の調和を図る、と理解される
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)全部改正 現行会社更生法(平成14年法律第154号)の制定により、旧会社更生法(昭和27年)を全面的に改める中で保全管理人制度が整備された。本条の制定後の改正経緯は確認を要するため、総改正回数は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:現行会社更生法(平成14年法律第154号)の全部改正により、旧会社更生法(昭和27年)を全面的に改めるなかで保全管理人制度が整備された。制定後の個別改正経緯は人的検証を要する
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める