会社更生法 第104条(担保権消滅許可の決定)
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- 裁判所は、更生手続開始当時更生会社の財産につき特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権(以下この款において「担保権」という。)がある場合において、更生会社の事業の更生のために必要であると認めるときは、管財人の申立てにより、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産を目的とするすべての担保権を消滅させることを許可する旨の決定をすることができる。
- 2.前項の決定は、更生計画案を決議に付する旨の決定があった後は、することができない。
- 3.第一項の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
- 一担保権の目的である財産の表示
- 二前号の財産の価額
- 三消滅すべき担保権の表示
- 4.第一項の決定があった場合には、その裁判書を、前項の書面(以下この条及び次条において「申立書」という。)とともに、当該申立書に記載された同項第三号の担保権を有する者(以下この款において「被申立担保権者」という。)に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
- 5.第一項の決定に対しては、被申立担保権者は、即時抗告をすることができる。
- 6.前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を被申立担保権者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
- 7.申立書に記載された第三項第三号の担保権が根抵当権である場合において、根抵当権者が第四項の規定による送達を受けた時から二週間を経過したときは、当該根抵当権の担保すべき元本は、確定する。
- 8.民法第三百九十八条の二十第二項の規定は、第一項の申立てが取り下げられ、又は同項の決定が取り消された場合について準用する。
この条文の基本情報
担保権消滅許可の決定とは何ですか?
定義担保権消滅許可の決定とは、会社更生法第104条に定められた規定で、「裁判所は、更生手続開始当時更生会社の財産につき特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権(以下この款において「担保権」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第104条(担保権消滅許可の決定)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第104条の条文原文は「裁判所は、更生手続開始当時更生会社の財産につき特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権(以下この款において「担保権」という。」で始まります。
- 会社更生法第104条は第一款に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第104条の前の条は会社更生法第103条です。
- 会社更生法第104条の次の条は会社更生法第105条です。
- 会社更生法第104条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第104条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第104条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/104
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法104条は、事業の更生に必要な財産について、管財人が価額相当額を裁判所に納付すれば、担保権者の同意なく抵当権など全担保権を消滅させられると定める。
Q · 会社が更生手続に入ったら、抵当権を持っていても同意なしで担保が消されるって本当?
管財人が価額相当額を納付すれば、同意なく担保権が消える
会社更生法104条により、裁判所は管財人の申立てに基づき、事業の更生に必要な財産について、その価額に相当する金銭の納付を条件に、特別の先取特権・質権・抵当権・商法や会社法上の留置権をすべて消滅させる許可決定ができます。担保権者の同意は要件ではありません。担保権者は即時抗告(5項)で決定の当否を、価額決定の請求(次条105条)で価額の妥当性を争えます。納付された金銭からは担保権の順位に従って優先弁済を受けられます。
解説
あなたの銀行が更生会社の工場に5億円の抵当権を握っていたとする。ある日、管財人が裁判所にこう申し立てる。「この工場は事業の更生に不可欠だ。時価相当の3億円を裁判所に納付するから、ついている担保権を全部消滅させてほしい」。会社更生法104条は、これを許可する権限を裁判所に与えている。担保権者であるあなたの同意は要件のどこにも書かれていない。価額に相当する金銭が裁判所に納付されれば、特別の先取特権も、質権も、抵当権も、商法・会社法上の留置権も、その財産の上からすべて消える。あなたに残された武器は二本。一つは即時抗告(5項)、もう一つは次条105条の価額決定の請求である。管財人が提示した価額が低すぎると思うなら、裁判所に評価をやり直させる手続だ。だが沈黙していれば、提示額がそのまま回収の上限として固まる。担保を取った側が、その担保を一方的に失う場面が、ここにある。
法的な位置づけ
会社更生法104条は、担保権消滅許可の制度を定める規定である。更生手続開始当時に更生会社の財産上に存する特別の先取特権・質権・抵当権・商法または会社法上の留置権について、事業の更生に必要と認められる場合に、管財人の申立てにより、裁判所が当該財産の価額相当額の納付を条件として、その財産上のすべての担保権を消滅させることを許可する決定をする手続を規律する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.申立書の送達日を記録し各期間を確認 管財人からの申立書が届いたら、まず送達日を正確に記録する。即時抗告(5項)、価額決定の請求(次条105条)、根抵当権の元本確定(7項・送達から2週間)の各起算点はすべて送達日となるため、最初に押さえる
- 2.担保物件の時価を自前で評価 不動産鑑定士や専門家に依頼し、担保物件の客観的な時価評価を取得する。管財人が更生のために低めに見積もった提示価額と、自前評価額との差額を把握しておく
- 3.価額に不服なら価額決定の請求を期間内に提出 提示価額が低すぎる場合、即時抗告に走る前に、まず次条105条の価額決定の請求を法定期間内に提出する。これで裁判所が改めて評価人を選び、価額を客観的時価まで評価し直す
- 4.決定そのものに不服なら即時抗告 担保権を消滅させる決定の当否(事業の更生に必要かの判断など)に不服がある場合は、価額の問題とは別に即時抗告(5項)を申し立てる。手続の選択を誤らない
- 5.根抵当権なら元本確定後の債権範囲を整理 担保が根抵当権の場合、送達から2週間で元本が確定する(7項)。確定前後で被担保債権の範囲を整理し、確定後の新規取引債権が担保されない点を踏まえて回収戦略を組み直す
よくある質問 AI による整理
Q1担保権消滅許可とは何ですか?
会社更生法104条に基づき、管財人が財産の価額相当額を裁判所に納付することを条件に、その財産上のすべての担保権を裁判所の許可で消滅させる制度です。担保権者の同意は不要です。
Q2担保権消滅許可の申立ては誰ができますか?
管財人のみが申立てできます。事業の更生に必要と認められる財産が対象で、担保権者や更生会社自身が直接申し立てることはできません。
Q3担保権消滅許可はいつまでに申し立てできますか?
更生計画案を決議に付する旨の決定があった後はできません(2項)。管財人は計画決議の前段階でこの手続を済ませる必要があります。
Q4価額決定の請求と即時抗告の違いは?
即時抗告(5項)は消滅決定そのものの当否を争う手続、価額決定の請求(次条105条)は提示された価額が妥当かを争う手続です。目的が異なるため取り違えると争えなくなります。
Q5担保権消滅許可に不服があるときはどうすればいい?
決定の当否には即時抗告(5項)、価額には価額決定の請求(次条105条)を、いずれも申立書の送達後の法定期間内に行います。沈黙すると提示額のまま確定します。
Q6根抵当権は担保権消滅許可でどうなりますか?
申立書の送達を受けた時から2週間の経過で、根抵当権の担保すべき元本が法律上確定します(7項)。確定後の新規取引による債権は担保されません。
Q7民事再生や破産にも担保権消滅の制度はありますか?
あります。民事再生法148条の担保権消滅請求、破産法186条の担保権消滅許可が対応制度です。手続の主体や要件が異なるため混同に注意が必要です。
Q8担保権消滅許可で担保が消えたら回収はどうなりますか?
裁判所に納付された金銭から担保権の順位に従って優先弁済を受けます。価額を超える融資残高は無担保の更生債権として扱われ、回収率は大きく下がります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1担保を取っていたのに、同意なしで消されるのは財産権の侵害じゃないんですか?
侵害にはなりません。104条は担保権を消す代わりに、価額に相当する金銭を裁判所に納付させ、担保権者はその金銭から優先弁済を受けられるからです。価額に不満があれば即時抗告(5項)や価額決定の請求(次条105条)で争えます。実務のポイント:実務では管財人が提示する価額は更生のために低めに出がちです。価額決定の請求で評価をやり直させると、数千万円から億単位で上がることがある。沈黙したまま期間を過ごすのが一番損をする選択です
Q2消滅した担保権の代わりに納付されたお金は、誰がどうやって受け取るんですか?
裁判所に納付された金銭は、消滅した担保権の優先順位に従って配当され、被申立担保権者はその範囲で優先弁済を受けます。担保価額を超える融資残高は無担保の更生債権として扱われます。実務のポイント:複数の担保権が重なっていた財産では、後順位の担保権者は価額が先順位で食い尽くされてゼロ配当ということも珍しくない。自分の順位と価額の関係を最初に確認しないと、抗告すべきかどうかの判断すら誤ります
間違えやすい点 AI による整理
- 「担保があるのだから優先的に全額回収できる」と思い込んでいる債権者が多いが、更生手続では裁判所に納付された価額相当額しか担保からは回収できない。融資残高とその価額の差額は、無担保の更生債権へ転落する
- 担保権者なら即時抗告できると知っている人は多い。だが見落とされがちなのは、即時抗告(5項)で争えるのは「担保権を消滅させる決定そのものの当否」であって、「価額が妥当かどうか」は別ルートの価額決定の請求(次条105条)で争うという点だ。手続を取り違えると、不服があっても価額が確定してしまう
- 「同意さえしなければ担保は守れる」という前提で身構える担保権者がいるが、そもそも104条に担保権者の同意は要件として存在しない。問うべきは「同意するかどうか」ではなく「提示された価額をどの手続でどう争うか」である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 根拠条文・手続 | 会社更生法104条:担保権消滅許可(管財人申立て) | 民事再生法148条:担保権消滅請求(再生債務者等の請求) 破産法186条:担保権消滅許可(破産管財人申立て・現行効力要確認) |
| 申立ての主体 | 管財人 | 再生債務者または管財人 破産管財人 |
| 目的・前提 | 事業の更生に必要な財産の担保権を一括消滅 | 事業の継続に欠くことのできない財産の担保を消滅 破産財団の換価のため担保権を消滅 |
| 担保権者の対抗手段 | 即時抗告(5項)・価額決定の請求(次条105条) | 価額決定の請求・買受けの申出 価額決定の請求・即時抗告 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の公司重整では担保権は有擔保重整債權として手続に組み込まれるが、日本のように裁判所への価額納付で担保権を強制消滅させる独立手続は明確には存在しない点が異なる。
韓国の회생절차でも担保付債権は회생담보권として扱われ、回生計画の中で権利変更が図られる。日本の事前の担保権消滅許可とは構造が異なる。
ドイツでは管財人が担保目的物を換価し、担保権者は換価代金から弁済を受ける構造。担保権を決定で消滅させるのではなく換価権限を管財人に集中させる点で異なる。
米国連邦倒産法では、トラスティが財産を担保権の負担を消滅させた状態(free and clear)で売却でき、担保権は売却代金に移行する。本条の直接の発想的源流に近い。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先の製造業が更生手続に入り、あなたの銀行が設定した工場の抵当権について、管財人から申立書が届いた。記載された「財産の価額」が融資残高を大きく下回っている。即時抗告も価額決定請求も期間が短い。動き出しが遅れれば、提示された低い金額のまま担保権が消滅し、回収不足分は更生債権という紙くず同然の地位に落ちる
- あなたの会社が更生会社に継続的に融資し、根抵当権を設定していた。申立書の送達を受けてから2週間が経過した瞬間、根抵当権の被担保元本が法律上確定する(7項)。確定後の新規取引による債権は、もうその根抵当権では担保されない。送達日を一日見落とすだけで、確定のタイミングを争う余地が消える
- もし、あなたが更生会社の管財人で、事業継続に欠かせない本社ビルに三つの金融機関の抵当権が重なっていたら、どう動く? 各行と個別に同意交渉していては時間が足りない。104条の申立てなら、価額相当額を裁判所に納付するだけで、三つの担保権を一括で消滅させ、担保のついていないビルとして事業譲渡の対象にできる
- 更生計画案を決議に付する旨の決定が出た後では、もうこの申立てはできない(2項)。管財人にとって担保権消滅は、計画決議より前に終わらせなければならない一手だ。タイミングを逃せば、担保付きのまま計画の中で処理するしかなくなる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 申立書の送達日を正確に記録し、即時抗告(5項)と価額決定請求(次条105条)の期間を即座に確認する2. 不動産鑑定士など専門家による担保物件の時価評価を自前で取り、管財人提示額との差額を把握する3. 提示額が低すぎるなら価額決定の請求を期間内に提出、決定そのものに不服なら即時抗告を選ぶ4. 根抵当権なら送達から2週間で元本が確定する点(7項)を踏まえ、確定前後の被担保債権の範囲を整理しておく
訴えられた側:1. 管財人として、事業継続に不可欠な財産を特定し、その上の担保権の全体像(先取特権・質権・抵当権・留置権)を洗い出す2. 適正な価額を算定し、申立書に財産の表示・価額・消滅すべき担保権を正確に記載する(3項) 3. 更生計画案を決議に付する決定が出る前に申し立てる(2項の期限を厳守) 4. 被申立担保権者への送達と即時抗告期間の経過を見極め、納付による消滅の効果を確定させる
時効(請求できる期限):申立ては、更生計画案を決議に付する旨の決定があった後はできない(2項)。被申立担保権者の即時抗告(5項)および価額決定の請求(次条105条)は、申立書の送達を受けた後の法定期間内に行う必要がある。根抵当権の被担保元本は、送達を受けた時から2週間の経過で確定する(7項)。各期間の起算点はいずれも送達日となる(最新の手続期間をご確認ください)
学説
通説:本条の担保権消滅許可は、担保権者の優先弁済の利益を価額相当額の納付によって金銭的に補償しつつ、事業の一体的更生を可能にする制度と理解される。担保権は『物への優先権』から『納付金からの優先弁済権』へ転化するが、価値そのものは失われず、即時抗告と価額決定の請求により事後的な権利保護が図られているとされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)会社更生法全部改正 旧会社更生法を全面改正し、現行会社更生法を制定。民事再生法の担保権消滅請求制度をモデルに、事業の更生に不可欠な財産から担保権を一括消滅させる本条を新設した
- 平成17年(2005年)会社法制定に伴う整備 会社法の制定に伴い、1項の留置権の根拠として「商法若しくは会社法の規定による留置権」を明記する整理が行われた
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 新設:旧会社更生法を全部改正し現行会社更生法を制定。民事再生法の担保権消滅請求制度をモデルに、事業の更生に不可欠な財産から担保権を一括消滅させる本条を新設した。
- 2.平成17年(2005年) 改正:会社法の制定に伴う整備により、1項の留置権の根拠として『商法若しくは会社法の規定による留置権』を明記する整理が行われた。
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