株式会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、その株式会社の業務に関し、特定の債権者又は担保権者に対するその株式会社の債務について、他の債権者又は担保権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であってその株式会社の義務に属せず又はその方法若しくは時期がその株式会社の義務に属しないものをし、株式会社について更生手続開始の決定が確定したときは、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
要点会社更生法 267 条は、他の債権者を害する目的で行う義務外の弁済・担保供与を罰する偏頗弁済罪を定め、更生手続開始決定の確定を条件に五年以下の拘禁刑を科す。
Q · 倒産しそうな会社が、お世話になった取引先にだけ先に返済したら罪になるの?
原則違法。特定の債権者だけ優遇すると社長が刑事責任を負う
会社更生法 267 条により、他の債権者を害する目的で、義務に属しない又は方法・時期が義務に属しない担保供与・債務消滅行為を行い、更生手続開始の決定が確定すると偏頗弁済罪が成立し、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金、又はその併科となります。罰せられるのは会社ではなく、指示した代表者や振込を実行した従業者という個人です。ただし期限が到来した債務を約束どおりの方法で返す通常弁済は処罰の対象になりません。
倒産寸前の会社が、長年世話になった取引先に「先に払っておく」と借金を返す。あるいは特定の銀行にだけ追加の担保を差し入れる。義理堅い、当然の行為に見える。だがこれが五年以下の拘禁刑(刑務所に入る刑、2025 年 6 月施行の改正で懲役・禁錮を統合した呼称)になりうる。会社更生法 267 条が罰するのは、特定の債権者だけを優遇し、他の債権者を害する目的で行う「担保の供与」や「債務の消滅」だ。鍵は二つ。第一に「その株式会社の義務に属せず」、つまり払う義務がまだない債務を先に払う、頼まれてもいない担保を出す行為。第二に、義務があっても「方法・時期が義務に属しない」、つまり期限前の弁済や、約束にない方法での担保提供。期限が来た借金を約束どおり普通に返すのは罪にならない。だが危機時に「誰かを特別扱い」した瞬間、線を越える。しかも更生手続開始の前後を問わず、後に開始決定が確定して初めて罪が完成する時限装置だ。
会社更生法 267 条は偏頗弁済罪を定める罰則規定であり、株式会社の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、他の債権者を害する目的で、義務に属しない又は方法・時期が義務に属しない担保の供与・債務の消滅行為を行い、更生手続開始の決定が確定した場合に処罰の対象とする規定である。
倒産の危機にある会社が、特定の債権者だけを優遇して弁済や担保供与を行うことです。義務に属しない、又は方法・時期が義務に属しない行為が会社更生法 267 条で処罰されます。
五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金、又はその併科です。会社ではなく代表者・従業者という個人が処罰対象になります。
更生手続開始の前後を問わず行為を行い、その後に更生手続開始の決定が確定したときに罪が完成します。確定が処罰条件となる時限装置型の犯罪です。
頼まれていない担保や義務に属しない担保を、他の債権者を害する目的で差し入れると会社更生法 267 条の担保供与として処罰されえます。義務ある担保の通常提供は別です。
背任罪(刑法 247 条)は任務違背による会社への加害一般を罰し、偏頗弁済罪は倒産局面で債権者平等を害する弁済・担保供与に特化します。両者は競合しうります。
構造は同じです。破産法 266 条、民事再生法 256 条にも同型の偏頗弁済罪があり、どの倒産手続を選んでも危機時のえこひいき弁済は処罰を免れません。
公訴時効は原則 5 年(刑事訴訟法 250 条 2 項)。ただし更生手続開始決定の確定が処罰条件のため、起算点を行為時とするか確定時とするかは解釈が分かれます。
本罪は行為時点では未完成で、後に裁判所の更生手続開始決定が確定して初めて成立します。確定しなければ処罰されない条件付きの構造です。
なりません。267 条が罰するのは「義務に属せず、又は方法・時期が義務に属しない」弁済です。すでに期限が到来した債務を約束どおりの方法で返すのは正常な弁済で、構成要件に当たりません。罪になるのは期限前の駆け込み返済や、頼まれてもいない担保の差し入れです。業界裏話ヒント:危ない会社の経理で最も狙われるのが期限前弁済。資金があるうちに親しい相手へ前倒しで払う行為が、最も立件されやすい類型です。払うなら期限到来後、約束どおりの方法で、が鉄則
条文上「使用人その他の従業者」も対象で、理論上は処罰されえます。ただし実際には「他の債権者を害する目的」という主観要件があり、指示に従っただけで目的を共有していない担当者まで立件されるのは稀です。業界裏話ヒント:それでも捜査では従業者の供述が社長の故意立証の鍵になります。安易に「社長に害意があった」と供述すると自分の関与も深く問われる。事情を聞かれたら、答える前に弁護士へ相談するのが身を守る道
別物です。民事の否認権(会社更生法 86 条系統)は財産を取り戻す手続、267 条は行為者個人を刑事処罰する規定で、両者は並行します。否認に応じたから刑事を免れる、という関係にはありません。業界裏話ヒント:実務では悪質性が低ければ刑事まで行かず否認で収まることが多い。だが「害する目的」が証拠で明白だと、管財人が刑事告発に踏み切る。否認の交渉段階での態度が、刑事へ発展するかの分かれ目になることがある
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規制対象行為 | 267 条:特定債権者への偏頗的な担保供与・債務消滅(義務外・方法時期の逸脱) | — |
| 性質 | 刑事罰(偏頗弁済罪) | — |
| 主観要件 | 他の債権者を害する目的 | — |
| 効果 | 五年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金(併科可) | — |
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