会社更生法 第267条(特定の債権者等に対する担保の供与等の罪)
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株式会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、その株式会社の業務に関し、特定の債権者又は担保権者に対するその株式会社の債務について、他の債権者又は担保権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であってその株式会社の義務に属せず又はその方法若しくは時期がその株式会社の義務に属しないものをし、株式会社について更生手続開始の決定が確定したときは、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
この条文の基本情報
特定の債権者等に対する担保の供与等の罪とは何ですか?
定義特定の債権者等に対する担保の供与等の罪とは、会社更生法第267条に定められた規定で、「株式会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、その株式会社の業務に関し、特定の債権者又は担保権者に対するその株式会社の債務につい…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第267条(特定の債権者等に対する担保の供与等の罪)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第267条の条文原文は「株式会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、その株式会社の業務に関し、特定の債権者又は担保権者に対するその株式会社の債務につい…」で始まります。
- 会社更生法第267条は第十三章に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第267条の前の条は会社更生法第266条です。
- 会社更生法第267条の次の条は会社更生法第268条です。
- 会社更生法第267条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第267条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第267条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/267
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法267条は、他の債権者を害する目的で行う義務外の弁済・担保供与を罰する偏頗弁済罪を定め、更生手続開始決定の確定を条件に五年以下の拘禁刑を科す。
Q · 倒産しそうな会社が、お世話になった取引先にだけ先に返済したら罪になるの?
原則違法。特定の債権者だけ優遇すると社長が刑事責任を負う
会社更生法267条により、他の債権者を害する目的で、義務に属しない又は方法・時期が義務に属しない担保供与・債務消滅行為を行い、更生手続開始の決定が確定すると偏頗弁済罪が成立し、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金、又はその併科となります。罰せられるのは会社ではなく、指示した代表者や振込を実行した従業者という個人です。ただし期限が到来した債務を約束どおりの方法で返す通常弁済は処罰の対象になりません。
解説
倒産寸前の会社が、長年世話になった取引先に「先に払っておく」と借金を返す。あるいは特定の銀行にだけ追加の担保を差し入れる。義理堅い、当然の行為に見える。だがこれが五年以下の拘禁刑(刑務所に入る刑、2025年6月施行の改正で懲役・禁錮を統合した呼称)になりうる。会社更生法267条が罰するのは、特定の債権者だけを優遇し、他の債権者を害する目的で行う「担保の供与」や「債務の消滅」だ。鍵は二つ。第一に「その株式会社の義務に属せず」、つまり払う義務がまだない債務を先に払う、頼まれてもいない担保を出す行為。第二に、義務があっても「方法・時期が義務に属しない」、つまり期限前の弁済や、約束にない方法での担保提供。期限が来た借金を約束どおり普通に返すのは罪にならない。だが危機時に「誰かを特別扱い」した瞬間、線を越える。しかも更生手続開始の前後を問わず、後に開始決定が確定して初めて罪が完成する時限装置だ。
法的な位置づけ
会社更生法267条は偏頗弁済罪を定める罰則規定であり、株式会社の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、更生手続開始の前後を問わず、他の債権者を害する目的で、義務に属しない又は方法・時期が義務に属しない担保の供与・債務の消滅行為を行い、更生手続開始の決定が確定した場合に処罰の対象とする規定である。
よくある質問 AI による整理
Q1偏頗弁済とは何ですか?
倒産の危機にある会社が、特定の債権者だけを優遇して弁済や担保供与を行うことです。義務に属しない、又は方法・時期が義務に属しない行為が会社更生法267条で処罰されます。
Q2会社更生法267条の罰則はどのくらいですか?
五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金、又はその併科です。会社ではなく代表者・従業者という個人が処罰対象になります。
Q3偏頗弁済罪はいつ成立しますか?
更生手続開始の前後を問わず行為を行い、その後に更生手続開始の決定が確定したときに罪が完成します。確定が処罰条件となる時限装置型の犯罪です。
Q4倒産前に担保を出すと違法ですか?
頼まれていない担保や義務に属しない担保を、他の債権者を害する目的で差し入れると会社更生法267条の担保供与として処罰されえます。義務ある担保の通常提供は別です。
Q5偏頗弁済罪と背任罪の違いは?
背任罪(刑法247条)は任務違背による会社への加害一般を罰し、偏頗弁済罪は倒産局面で債権者平等を害する弁済・担保供与に特化します。両者は競合しうります。
Q6会社更生と破産で偏頗弁済罪は違いますか?
構造は同じです。破産法266条、民事再生法256条にも同型の偏頗弁済罪があり、どの倒産手続を選んでも危機時のえこひいき弁済は処罰を免れません。
Q7偏頗弁済罪の時効はどのくらいですか?
公訴時効は原則5年(刑事訴訟法250条2項)。ただし更生手続開始決定の確定が処罰条件のため、起算点を行為時とするか確定時とするかは解釈が分かれます。
Q8更生手続開始の決定が確定とはどういう意味ですか?
本罪は行為時点では未完成で、後に裁判所の更生手続開始決定が確定して初めて成立します。確定しなければ処罰されない条件付きの構造です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1期限が来た借金を普通に返しただけでも、後で倒産したら罪になるんですか?
なりません。267条が罰するのは「義務に属せず、又は方法・時期が義務に属しない」弁済です。すでに期限が到来した債務を約束どおりの方法で返すのは正常な弁済で、構成要件に当たりません。罪になるのは期限前の駆け込み返済や、頼まれてもいない担保の差し入れです。実務のポイント:危ない会社の経理で最も狙われるのが期限前弁済。資金があるうちに親しい相手へ前倒しで払う行為が、最も立件されやすい類型です。払うなら期限到来後、約束どおりの方法で、が鉄則
Q2社長に言われて振込処理をしただけの経理担当も処罰されるんですか?
条文上「使用人その他の従業者」も対象で、理論上は処罰されえます。ただし実際には「他の債権者を害する目的」という主観要件があり、指示に従っただけで目的を共有していない担当者まで立件されるのは稀です。実務のポイント:それでも捜査では従業者の供述が社長の故意立証の鍵になります。安易に「社長に害意があった」と供述すると自分の関与も深く問われる。事情を聞かれたら、答える前に弁護士へ相談するのが身を守る道
Q3民事で否認されて取り戻されたら、それで終わりじゃないんですか?
別物です。民事の否認権(会社更生法86条系統)は財産を取り戻す手続、267条は行為者個人を刑事処罰する規定で、両者は並行します。否認に応じたから刑事を免れる、という関係にはありません。実務のポイント:実務では悪質性が低ければ刑事まで行かず否認で収まることが多い。だが「害する目的」が証拠で明白だと、管財人が刑事告発に踏み切る。否認の交渉段階での態度が、刑事へ発展するかの分かれ目になることがある
間違えやすい点 AI による整理
- 「借金を返すのは当然の義務で、犯罪になるはずがない」と思っている。だが267条が狙うのは「義務に属せず、又は方法・時期が義務に属しない」弁済。期限前に払う、頼まれていない担保を出す、これらは「当然の返済」ではなく偏頗行為。返済という形をとっていても罪になる
- あなたから見れば「世話になった相手への誠意」。だが法律から見れば「他の債権者の取り分を奪う加害行為」。この善意と加害の落差があなたを被告人にする。動機が善意でも、客観的に他の債権者を害する認識があれば「目的」の認定は妨げられない
- 「会社が罰金を払えば済む」と軽く考えている人は、深刻度を見誤っている。267条が処罰するのは会社ではなく「代表者・代理人・使用人その他の従業者」という生身の個人。指示した社長も、振込を実行した経理担当者も、五年以下の拘禁刑の射程に入る。法人の問題ではなく、あなた個人の前科の問題だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規制対象行為 | 267条:特定債権者への偏頗的な担保供与・債務消滅(義務外・方法時期の逸脱) | 265条:更生会社財産の隠匿・損壊・不利益処分(詐欺更生罪) 86条:危機時の偏頗行為・無償行為を民事で取り消す否認権 |
| 性質 | 刑事罰(偏頗弁済罪) | 刑事罰(詐欺更生罪) 民事の否認権(財産回復) |
| 主観要件 | 他の債権者を害する目的 | 債権者を害する目的 原則として故意不要、行為の客観性が中心 |
| 効果 | 五年以下の拘禁刑又は五百万円以下の罰金(併科可) | より重い法定刑(詐欺更生罪) 行為の効力否認・財産の取戻し |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も倒産局面での偏頗行為を規制するが、独立した会社更生犯罪規定の整備度は日本と異なる
韓国は倒産手続を統合した単一法典の中に偏頗弁済型の罰則を置く
ドイツ刑法283c 条は債権者優遇罪として偏頗弁済を直接処罰し、日本法の母法的位置にある
米国は刑事の破産詐欺と民事の否認(preference)を分けて規律する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 資金繰りに行き詰まった会社の社長。メインバンクに泣きつかれ、他の取引先より先に、約束になかった不動産担保を差し入れた。半年後に更生手続開始が確定する。あなたの「恩返し」が、267条の担保供与罪として立件される。借金を返した、担保を出した、それだけなのに被告人席に座る
- もし、潰れかけた会社がグループ内の一社にだけ先に支払い、他の下請けを置き去りにしたらどうなる。その支払いを指示した代表者も、伝票を処理した経理担当者も、「代表者・使用人その他の従業者」として処罰の射程に入る。会社ではなく手を動かした人間が罪に問われる
- 下請けのあなたは一円も回収できず連鎖倒産。だが同業の A 社だけは満額回収していた。偶然ではない。期限前の駆け込み弁済だ。否認権の行使と並行して、刑事告発の道も残っている
- あと数週間で資金がショートする。役員会で「あの会社にだけ先に払うか」を議論している。ここで「他社を後回しにして害してでも」という趣旨が議事録やチャットに残れば、それが「害する目的」という故意の証拠になる。返済順序の判断一つが、経営危機を刑事事件に変える分水嶺だ
取るべき行動
被害を受けた側:1. 倒産した取引先が、あなたより先に他の債権者へ弁済・担保提供していないか調査する。登記簿の担保設定日、振込記録の日付が証拠になる2. 期限前の弁済や義務外の担保なら、まず管財人に否認権の行使を求める(会社更生法86条系統) 3. 悪質で「他の債権者を害する目的」が窺えるなら、捜査機関への刑事告発も選択肢に入れる4. 更生手続開始決定の確定が処罰の条件なので、手続の進行状況を弁護士と確認しながら動く
訴えられた側:1. 最大の争点は「他の債権者を害する目的」の有無。資金繰り維持・事業継続のための合理的判断だったと立証できる記録を整理する2. 期限が到来していた通常弁済なら「義務に属する」として構成要件不該当を主張3. 役員会議事録・メール・チャットに「あの会社にだけ先に」のような表現が残っていないか確認し、不利な証拠の有無を把握4. 倒産と刑事の双方に強い弁護士へ早期相談。民事の否認と刑事は連動して動く
時効(請求できる期限):公訴時効は原則として犯罪行為終了時から5年(刑事訴訟法250条2項、長期5年の拘禁刑に対応)。ただし本罪は「更生手続開始の決定の確定」が処罰条件であり、時効の起算点を行為時とするか確定時とするかは実務上、解釈が分かれている(最新の実務動向をご確認ください)
学説
通説:本罪の成立には「他の債権者を害する目的」という主観的要件が必要であり、事業継続や資金繰り維持のための合理的な弁済は、結果的に一部債権者を優遇しても直ちには該当しないと解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年) 会社更生法の全部改正(新法制定)に伴い、旧法の罰則を再編して本罪を整備。偏頗的な担保供与・債務消滅行為の処罰を倒産犯罪体系に位置づけた
- 令和4年(2022年)公布、令和7年(2025年6月1日)施行 「懲役」を「拘禁刑」に改める刑法等改正に連動し、法定刑を「五年以下の拘禁刑」に変更。条文の文言が現行のものに更新された
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 新設:会社更生法の全部改正(新法制定)により、旧法の罰則を再編し、偏頗的な担保供与・債務消滅行為の処罰を倒産犯罪体系に位置づけた
- 2.令和4年(2022年)公布・令和7年(2025年6月1日)施行 改正:刑法等改正に連動し「懲役」を「拘禁刑」に統合、法定刑を五年以下の拘禁刑に変更
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