会社更生法 第80条(管財人の注意義務)
クイックジャンプ
- 管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
- 2.管財人が前項の注意を怠ったときは、その管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。
この条文の基本情報
管財人の注意義務とは何ですか?
定義管財人の注意義務とは、会社更生法第80条に定められた規定で、「管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第80条(管財人の注意義務)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第80条の条文原文は「管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。」で始まります。
- 会社更生法第80条は第二款に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第80条の前の条は会社更生法第79条です。
- 会社更生法第80条の次の条は会社更生法第80条の2です。
- 会社更生法第80条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第80条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第80条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/80
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法80条は、管財人が善良な管理者の注意で職務を行う義務を定め、これを怠り利害関係人に損害を与えれば、管財人は連帯して賠償責任を負う。
Q · 倒産した取引先の管財人にミスがあったら、債権者は損害賠償を請求できる?
怠れば管財人個人が連帯で賠償責任を負います
会社更生法80条1項により、管財人は善良な管理者の注意をもって職務を行う義務を負います。2項は、この注意を怠って利害関係人(更生債権者・担保権者・株主など)に損害を与えたとき、管財人が個人として連帯して損害を賠償する義務を負うと定めます。裁判所が選任した管財人であっても、任務懈怠があれば責任は免れません。ただし損害額と因果関係の立証責任は請求する側にあります。
解説
取引先が倒産し、会社更生手続が始まった。あなたの売掛金3,000万円は宙に浮く。経営権は裁判所が選んだ管財人の手に移り、あなたは「もう待つしかない」と思い込む。だが会社更生法80条は、あなたに一本の綱を握らせている。管財人は「善良な管理者の注意」(その道のプロとして当然払うべき注意のレベル)をもって職務を行う義務を負い、これを怠って利害関係人(あなたを含む更生債権者・担保権者・株主)に損害を与えれば、管財人個人が賠償責任を負う。しかも管財人が複数いれば、全員が連帯責任だ。管財人は手の届かない雲の上の存在ではない。彼らの職務遂行は、あなたを含む利害関係人に対する法的責任の上に成り立っている。それを知っている債権者と知らない債権者では、手続の中での立ち回りが根本から変わる。
法的な位置づけ
会社更生法80条は、更生会社の管財人が負う善管注意義務とその違反による損害賠償責任を定める規定である。管財人は善良な管理者の注意をもって職務を遂行する義務を負い、これを怠って利害関係人に損害を生じさせた場合、管財人は連帯して賠償義務を負う。受任者の善管注意義務(民法644条)の倒産局面における具体化として機能する。
手順
- 1.任務懈怠と損害を特定して裏づける 管財人のどの行為または不作為で、会社財産がいくら不当に減ったかを特定する。廉価売却、回収可能な債権の放置、不利な契約締結などを、取引記録・評価資料・時系列で裏づける
- 2.手続内で問題提起し書面で説明を求める まず裁判所の監督と債権者委員会・関係人集会の場で問題を提起し、「善管注意義務に照らし価格や判断の妥当性を書面で説明せよ」と求める。管財人は裁判所への報告義務があるため書面が効きやすい
- 3.改善されなければ80条2項で賠償請求 改善されず損害が確定するなら、会社更生法80条2項に基づき管財人個人へ損害賠償を請求する。財産が手続内に残り、管財人が在任中のうちに動くのが鉄則。終結後は証拠が散逸する
- 4.倒産・会社法に強い弁護士と早期に組む 損害額と因果関係の立証責任は請求側にあるため、倒産法・会社法に精通した弁護士と早期に組む。経営判断の裁量が認められる点を踏まえ、立証の核心を絞る
よくある質問 AI による整理
Q1会社更生法の管財人とは?
裁判所が選任し、更生会社の事業経営・財産の管理処分を担う中立の職務遂行者です。更生債権者・担保権者・株主など利害関係人全体に対し善管注意義務を負います。
Q2管財人の善管注意義務とは?
善良な管理者の注意、すなわちその道のプロとして当然払うべき水準の注意で職務を行う義務です(会社更生法80条1項)。財産管理から事業譲渡まで職務全体に及びます。
Q3管財人に損害賠償を請求できる?
管財人が善管注意義務を怠り利害関係人に損害を与えた場合、80条2項により管財人個人へ損害賠償を請求できます。複数管財人なら全員が連帯責任を負います。
Q4管財人の連帯責任とは?
管財人が複数いる場合、任務懈怠による損害について全員が連帯して賠償義務を負うことです(80条2項)。被害者は誰に対しても全額を請求できます。
Q5管財人の善管注意義務違反はどう立証する?
管財人のどの行為や不作為で財産が不当に減ったかを特定し、当時知り得た情報・評価資料・時系列で裏づけます。立証責任は請求する側にあります。
Q6破産管財人と更生管財人の違いは?
更生管財人は再建型の会社更生手続、破産管財人は清算型の破産手続で選任されます。善管注意義務という背骨はほぼ同じで、破産法85条が破産管財人を規律します。
Q7管財人への損害賠償請求に時効はある?
80条2項に固有の時効はなく、民法166条の一般時効(知った時から5年、行使できる時から10年)が適用されます。手続終結後は証拠が散逸するため早期行動が現実的です。
Q8管財人の選任は誰が決める?
更生手続開始決定とともに裁判所が選任します(会社更生法67条)。多くは弁護士で、裁判所への定期報告義務を負います。
この条文についての質問 AI による整理
Q1倒産した取引先の管財人って、結局は会社側の人間でしょう?こっちの味方じゃないですよね?
管財人は会社側でも特定の債権者側でもなく、裁判所が選んだ中立の職務遂行者で、更生債権者・担保権者・株主など利害関係人全体に対して善管注意義務を負います(会社更生法80条)。誰か一人の代理人ではありません。実務のポイント:管財人の多くは弁護士で、裁判所への定期報告義務を負っています。だから債権者委員会から書面で具体的な質問を出すと、管財人は裁判所の目を意識して丁寧に対応せざるを得ない。口頭の問い合わせより、書面の方が圧倒的に効きます
Q2管財人を訴えたら、会社更生の手続自体が止まったり、こっちが不利になったりしませんか?
80条2項の損害賠償請求は管財人個人への責任追及で、更生手続そのものとは別軌道です。手続が止まることは原則ありません。管財人の解任(裁判所の権限)とも別問題なので、賠償請求と解任申立ては戦略を分けて考えます。実務のポイント:実務では、いきなり賠償訴訟に行くより、裁判所への上申、管財人への説明要求、債権者委員会での追及という段階を踏む方が効果的。賠償が認められても取り分が増えるとは限らず、まず手続内で財産の流出を止める方が回収に直結することが多い
Q3善管注意義務違反って、どのくらいのミスから問われるんですか?ちょっとした判断ミスでもアウト?
結果が悪かっただけでは足りず、その時点の情報で合理的な専門家なら避けられたはずの注意の欠如が必要です。経営判断には裁量が認められ、後知恵で『もっと高く売れた』というだけでは違反になりません(80条1項)。実務のポイント:裁判で勝負を分けるのは『当時、管財人が何を知り得たか』です。だから債権者側は、管財人が無視した重要情報(より高い買付提案、回収可能な債権の存在など)を時系列で押さえておく。この一点が任務懈怠の立証の核心になります
間違えやすい点 AI による整理
- 「裁判所が選んだ管財人なら間違いない、責任を問うなんて無理」と思われがちだが、80条2項は管財人が利害関係人に直接損害賠償責任を負うと明記している。裁判所が選任したことと、職務上のミスの責任は、まったく別の話だ
- 善管注意義務という言葉を聞いたことがあっても、その射程の広さを知る人は少ない。財産の管理処分だけでなく、債権回収、訴訟追行、契約の履行か解除かの選択、事業譲渡の価格交渉まで、職務のすべてに及ぶ。一点の油断が連帯責任に直結する
- 「管財人を訴えれば自分の損が丸ごと取り戻せる」と考えがちだが、法律から見た構図は違う。80条の賠償は『管財人の任務懈怠で不当に減った財産価値』を填補するもので、あなた個人の期待利益を全額回復する制度ではない。請求の組み立てを誤ると、勝っても取り分は思ったより小さい
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規定内容 | 80条:管財人の善管注意義務と違反時の連帯賠償責任 | 72条:管財人の事業経営・財産管理処分の権限 68条:管財人の解任 |
| 制度上の機能 | 管財人の責任の根拠(てこ) | 管財人の権限の根拠(注意義務が及ぶ範囲) 悪質な管財人の更迭・制裁 |
| 利害関係人の活用法 | 損害賠償請求で財産の流出分を取り戻す | 権限逸脱・廉価処分かを判断する基準 義務違反が重い場合に解任を申し立てる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も重整監督人・重整人に『善良管理人之注意』を課し、職務違反で会社が損害を受けたときは賠償責任を負わせる。日本の管財人責任と構造が酷似する。
韓国の統合倒産法も管理人に善管注意義務を課し、違反による損害賠償責任を定める。日本の会社更生法・破産法の枠組みに近い。
ドイツは倒産管財人(Insolvenzverwalter)の義務違反による損害賠償責任を明文化。倒産法上の固有の責任規定として機能する点が日本80条と共通。
米国は破産管財人の信認義務(fiduciary duty)を制定法と判例で構成し、忠実義務違反には個人責任が及ぶ。義務の射程は判例法で具体化される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先の更生手続で、管財人が会社の優良事業部門を相場より明らかに安く第三者へ売却した。本来もっと高く売れたはずで、更生債権者への配当原資が目減りする。これは善管注意義務違反の典型場面だ。あなたは減った分について、管財人個人に損害賠償を請求できる余地がある
- もし管財人が、明らかに回収可能な売掛金の請求を放置したまま時効にかけてしまったら? 会社の財産が理由なく減った分は、管財人の任務懈怠になりうる。ただし損害と因果関係を立証するのはあなたの側だ。証拠は手続が進むほど散逸する
- あなたが管財人に選任され、再建のため不採算店舗を一斉閉鎖した。後に株主から「拙速で企業価値を毀損した」と賠償請求される。経営判断には裁量があり、当時の情報で合理的だったと示せれば、責任は否定される
- 管財人が、裁判所の許可を要する重要財産の処分を許可なしで強行した。あなたが債権者委員会のメンバーなら、次の関係人集会まであと2週間。許可逸脱の事実を裁判所に上申するかどうか、限られた時間で判断を迫られる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 管財人のどの行為(または不作為)で、会社財産がいくら不当に減ったかを特定し、取引記録・評価資料・時系列で裏づける2. まず裁判所の監督と債権者委員会・関係人集会の場で問題提起し、書面で説明を求める3. 改善されず損害が確定するなら、80条2項に基づき管財人個人へ損害賠償請求。財産が手続内に残るうちに動くのが鉄則4. 損害額と因果関係の立証責任は請求側にあるため、倒産・会社法に強い弁護士と早期に組む
訴えられた側:1. 問題とされた行為が、当時の情報で合理的な経営判断だったことを、稟議・専門家意見書・評価書で再構成する2. 重要事項は事前に裁判所の許可を得ていた事実を示す。許可済みの行為は責任を否定しやすい3. 複数管財人なら、職務分掌で自分の担当外だったことを主張し、連帯責任の範囲を切り分ける4. 善管注意義務は結果責任ではない。最善でなくとも合理的範囲内だったと立証できれば免責される
時効(請求できる期限):80条2項の損害賠償請求に特有の時効規定はない。一般の消滅時効(民法166条、権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年)が適用される。起算点は通常、任務懈怠による損害と管財人を知った時。ただし手続終結後は証拠散逸で実質的な追及が困難になるため、法定時効より早期の行動が現実的(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:会社更生法80条の善管注意義務は、財産の管理処分にとどまらず、債権回収・訴訟追行・契約の履行解除の選択・事業譲渡の価格交渉など職務全般に及ぶ。違反の有無は結果ではなく、当時の情報を前提とした職務遂行過程の合理性で判断される。
経営判断の原則の類推:管財人の再建上の判断には一定の裁量が認められ、判断過程・内容に著しく不合理な点がなければ、後知恵で『もっと高く売れた』と評価されても善管注意義務違反とはならないとされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)全部改正 旧会社更生法(昭和27年)を全面的に作り直した現行会社更生法の制定に伴い、管財人の善管注意義務と利害関係人に対する連帯損害賠償責任を定める現行80条が置かれた。倒産法制現代化の一環
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:旧会社更生法(昭和27年)を全面的に作り直した現行会社更生法(平成14年法律第154号)の制定に伴い、管財人の善管注意義務と利害関係人に対する連帯損害賠償責任を定める現行80条が置かれた。倒産法制現代化の一環。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める