会社更生法 第48条(相殺権)
クイックジャンプ
- 更生債権者等が更生手続開始当時更生会社に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、更生債権者等は、当該債権届出期間内に限り、更生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。
- 2.更生債権者等が更生手続開始当時更生会社に対して負担する債務が賃料債務である場合には、更生債権者等は、更生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務(前項の債権届出期間の満了後にその弁済期が到来すべきものを含む。次項において同じ。)については、更生手続開始の時における賃料の六月分に相当する額を限度として、前項の債権届出期間内に限り、更生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。
- 3.前項に規定する場合において、更生債権者等が、更生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務について、更生手続開始後その弁済期に弁済をしたときは、更生債権者等が有する敷金の返還請求権は、更生手続開始の時における賃料の六月分に相当する額(同項の規定により相殺をする場合には、相殺により免れる賃料債務の額を控除した額)の範囲内におけるその弁済額を限度として、共益債権とする。
- 4.前二項の規定は、地代又は小作料の支払を目的とする債務について準用する。
この条文の基本情報
相殺権とは何ですか?
定義相殺権とは、会社更生法第48条に定められた規定で、「更生債権者等が更生手続開始当時更生会社に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するよう…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 会社更生法第48条(相殺権)は、日本の会社更生法に含まれる条文です。
- 会社更生法第48条の条文原文は「更生債権者等が更生手続開始当時更生会社に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第百三十八条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するよう…」で始まります。
- 会社更生法第48条は第二節に置かれています。
- 会社更生法の公布日は平成14年12月13日です。
- 会社更生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 会社更生法第48条の前の条は会社更生法第47条の2です。
- 会社更生法第48条の次の条は会社更生法第49条です。
- 会社更生法第48条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第48条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154 - 本サイト収録
会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第48条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/414AC0000000154/48
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点会社更生法48条は、更生債権者が開始当時に更生会社へ負う債務を、債権届出期間内に限り更生計画によらず相殺できると定める。賃料債務は6か月分が限度となる。
Q · 倒産した取引先に自社も債務を負っている場合、その分を相殺で回収できますか?
届出期間内なら更生計画によらず相殺できる
会社更生法48条により、更生債権者等が手続開始当時に更生会社へ債務を負い、債権と債務の双方が債権届出期間(138条1項)の満了前に相殺適状となれば、当該届出期間内に限り更生計画によらず相殺できます。賃料債務は手続開始時の賃料6か月分を限度に相殺でき、開始後に弁済期が到来する賃料を実際に弁済すれば、その範囲で敷金返還請求権が共益債権となり優先回収できます。地代・小作料にも準用されます。
解説
取引先のメーカーがある朝、会社更生手続の開始を発表した。あなたの会社はそこに800万円の売掛金を抱えている。普通に考えれば、更生計画で大幅にカットされ、戻るのは数割。だが、もしあなたの側もその取引先に600万円の買掛金を負っていたら、絵は一変する。会社更生法48条は、手続開始の時点で互いに債権と債務を持ち、それが債権届出期間の満了前に相殺できる状態になっていれば、更生計画によらず、届出期間内に限って相殺できると定める。600万円分はあなたが「払わないことで」実質満額回収。残る200万円だけが更生債権としてカットの対象になる。相殺は、あなたが持っていることに気付いていなかった担保なのだ。さらにあなたが賃貸人なら、開始後に弁済期が来る賃料も6か月分まで相殺でき、その分を実際に弁済すれば敷金返還請求権が共益債権として優先回収の列に並ぶ。地代・小作料でも同じ仕組みが働く。
法的な位置づけ
会社更生法48条は更生手続における相殺権を定める規定であり、更生債権者等が手続開始当時に更生会社へ負担する債務について、債権届出期間の満了前に相殺適状となった場合に、当該期間内に限り更生計画によらない相殺を認める。賃料債務は6か月分を限度とし、弁済額の範囲で敷金返還請求権を共益債権とする特則を含む。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.開始決定の公告で債権届出期間の満了日を確認 更生手続開始決定の公告を確認し、債権届出期間(138条1項)の満了日を把握する。この満了日が相殺権行使の生命線で、これを過ぎると更生計画によらない相殺権そのものが消える
- 2.自社が相手に負う債務を洗い出し相殺適状を確認 買掛金・前受金・賃料など、自社が更生会社へ負担する債務を全て洗い出し、相手への債権と債権届出期間の満了前に相殺適状になるかを確認する
- 3.相手への支払いを止め相殺に充てる債務を確保 開始直前直後に相手への買掛金や賃料を安易に振り込まない。先に払うと相殺に充てる債務が消え、満額回収の足場を自ら崩すため、送金前に自社の債権の有無を確認する
- 4.届出期間内に管財人へ相殺の意思表示 債権届出期間内に、管財人宛へ内容証明郵便で対当額を明示して相殺の意思表示を行う。期間経過後の通告は更生計画によらない相殺としては効かない
- 5.賃貸人は開始後賃料を弁済し敷金を共益債権化 賃貸人の場合、開始後に弁済期が到来する賃料を弁済期に実際に弁済する。これにより6か月分の範囲でその弁済額を限度に敷金返還請求権が共益債権となり、優先回収の地位を確保できる(48条3項)
よくある質問 AI による整理
Q1会社更生法の相殺権とは何ですか?
更生債権者等が手続開始当時に更生会社へ負う債務を、債権届出期間内に限り更生計画によらず相殺できる権利です(48条1項)。事実上の担保として機能します。
Q2会社更生の相殺はいつまでにすればいいですか?
債権届出期間(138条1項)内に限られます。かつ債権・債務の双方が同期間の満了前に相殺適状になっている必要があり、期限を過ぎると相殺権は失われます。
Q3会社更生で賃料は何か月分まで相殺できますか?
手続開始時の賃料の6か月分が限度です(48条2項)。開始後に弁済期が到来する賃料が対象で、届出期間内に相殺の意思表示が必要です。
Q4会社更生で敷金は戻ってきますか?
開始後に弁済期が来る賃料を実際に弁済すれば、6か月分の範囲でその弁済額を限度に敷金返還請求権が共益債権となり、更生債権より優先回収できます(48条3項)。
Q5会社更生で相殺が禁止されるのはどんな場合ですか?
支払不能や手続開始を知った後にわざわざ債務を負担した場合などは、49条の相殺禁止に該当し相殺が封じられます。開始時に対立していた自然な債権債務が保護対象です。
Q6相殺の意思表示は誰にどうやって行いますか?
管財人宛に、債権届出期間内に内容証明郵便などで対当額を明示して通告します。期間経過後の通告は更生計画によらない相殺としては効きません。
Q7地代や小作料も相殺の対象になりますか?
なります。48条4項により、賃料債務の6か月分相殺と敷金(保証金)の共益債権化の規律が地代・小作料にも準用されます。
Q8会社更生と民事再生で相殺のルールは違いますか?
枠組みは類似しますが、民事再生は民事再生法92条、破産は破産法67条が規律します。届出期間や限度の細部が異なるため、手続ごとの確認が必要です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1倒産した取引先にこっちも借金があるんですが、勝手に相殺しちゃっていいんですか?
開始時点で双方が債権債務を持ち、届出期間満了前に相殺できる状態なら、更生計画によらず届出期間内に相殺できます(48条1項)。意思表示は管財人宛に行います。実務のポイント:相殺は事実上の担保で、相殺できる債権者は他の一般債権者を出し抜いて満額回収できる。だから実務では、相手の信用不安が見えた段階で「自社がその相手に負う債務」を意図的に確保しておく、という回収戦略が静かに存在する。教科書には書かれないが、銀行が預金口座を握りたがる理由はここにある
Q2テナントが会社更生に入って賃料を滞納しています。敷金から引けますか?
開始後に弁済期が来る賃料は6か月分を限度に相殺でき、さらにその賃料を弁済期に実際に弁済すれば、敷金返還請求権がその弁済額の範囲で共益債権になります(48条2項・3項)。共益債権は更生債権より優先して随時弁済されます。実務のポイント:多くの貸主は「倒産したから払うだけ損」と賃料の弁済を止めてしまうが、それは逆効果。3項は「払うことで敷金を優先回収の地位に押し上げる」設計で、払わなければ敷金は一般の更生債権のまま埋もれる。払う勇気が回収を生む珍しい条文だ
Q3相殺できると思っていたのに管財人に拒否されました。なぜですか?
支払不能や更生手続開始を知った後にわざわざ債務を負担した場合などは、49条の相殺禁止に当たり、相殺が封じられます。開始時に対立していた自然な債権債務でなければ保護されません。実務のポイント:「相手が危ないと聞いてから、慌てて相手の商品を買って買掛金を作り、相殺の口実にする」という小細工は、まさに禁止対象の典型。相殺の可否は『いつから対立していたか』で決まるので、危機を知る前から続く正常な取引関係であることを示す証拠(契約日、発注履歴)が決定的になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「倒産した相手への支払いは止められない、契約通り払うしかない」と思い込んでいる人が多い。実は逆で、開始時点で相手にも自分の債権があるなら、その支払債務を相殺に回せる。何も考えず買掛金を振り込んでしまうと、満額回収のチャンスを自分から捨てることになる
- 相殺できると知っている人でも、その締切の厳しさまでは知らないことが多い。48条の相殺は「債権届出期間内」という時限付きの権利で、しかも届出期間満了前に相殺適状になっている必要がある。期限の重さを軽く見て、回収可能だった金額をまるごと失う例は実務に少なくない
- 賃貸人が「テナントが更生に入ったら敷金は戻らない」と諦めるのは、問いの立て方が間違っている。本当の論点は「敷金が戻るか」ではなく「敷金返還請求権を共益債権に格上げできるか」。48条3項は、開始後の賃料を弁済期にきちんと払えば、6か月分の範囲で敷金を共益債権にする道を開く。払うことが、回収の前提になる逆説だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 機能 | 48条:更生手続における相殺権の付与 | 49条:危機時に作出された債務の相殺禁止 47条:開始後の更生債権等の弁済禁止 |
| 債権者への効果 | 届出期間内なら更生計画によらず満額回収相当 | 不当な相殺を封じ、相殺による回収を否定 原則として弁済を受けられない前提を設定 |
| 時的限界 | 債権届出期間(138条1項)内、満了前の相殺適状が必要 | 開始・支払不能を知った後の債務負担を遡って制限 手続開始後、更生計画認可までの全期間 |
| 賃料・敷金の扱い | 賃料6か月分相殺+弁済で敷金を共益債権化(2・3項) | 規律対象外(相殺の可否のみ) 共益債権は随時弁済の受け皿(127条と連動) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は重整に破產法の抵銷規定を準用する構造。相殺(抵銷)を倒産手続でも認める点で日本と方向性が一致するが、賃料6か月分のような特則は持たない
韓国は統合倒産法(債務者回生法)で回生手続の相殺を規律。相殺の意思表示に時的限界を設ける点が日本と類似する
ドイツは倒産開始前から相殺適状にあった場合に相殺を認め(§94)、危機時の相殺取得を制限する(§96)。日本の48条+49条の組合せと発想が近い
米国連邦倒産法は手続前から存在する相互債務の相殺権を原則として保存しつつ、申立て直前の相殺取得を制限する。担保的機能の保護という点で共通する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたの会社が部品を納める取引先が会社更生を申し立てた。売掛金800万円は届出すれば数割しか戻らない。だが同じ相手に買掛金600万円がある。届出期間内に相殺を通告すれば、その600万円は満額回収したのと同じ価値になる。知っている経理と知らない経理で、会社の損失が数百万円違う
- テナントだった企業が更生手続に入り、滞納賃料が積み上がっている。あなたが賃貸人なら、開始後に弁済期が来る賃料も6か月分を限度に相殺でき、さらにその賃料をきちんと弁済すれば、預かっていた敷金の返還請求権が共益債権に格上げされ、一般の更生債権より先に回収できる
- もし取引先の更生開始通知が届いて、債権届出期間の締切まであと10日だとしたら? 相殺の意思表示はこの期間内にしないと、更生計画によらない相殺権そのものが消える。1日過ぎただけで、満額回収できたはずの切り札がただの紙くずになる
- あなたの会社のメインバンクに、その銀行が融資した取引先の更生情報が入った。銀行は預金との相殺を即座に検討する。一般の取引債権者より銀行が回収で先行する構造は、まさにこの相殺権が支えている
- 管財人の立場ならどう見えるか。ある債権者が突然「相殺します」と通告してきた。その債務が開始を知った後に意図的に作られたものなら、49条で相殺は禁止される。誰の相殺が正当で誰のが封じられるか、その線引きが更生財団の厚みを決める
取るべき行動
被害を受けた側:1. 開始決定の公告で債権届出期間の満了日を確認、これが相殺の生命線2. 自社が相手に負う債務(買掛金・前受金・賃料など)を洗い出し、相手への債権と相殺適状にあるか確認3. 相手への支払いを安易に実行しない、相殺に充てる債務を残す4. 届出期間内に管財人宛に内容証明郵便で相殺の意思表示、対当額を明示5. 賃貸人は開始後の賃料を弁済期に払い、敷金返還請求権を共益債権化(48条3項)して別途回収を確保
訴えられた側:管財人・更生会社側の視点。1. 通告された相殺が48条の要件(開始時の対立、届出期間満了前の相殺適状)を満たすか精査2. 債務負担が開始や支払不能を知った後に作られたものなら49条の相殺禁止を主張して封じる3. 賃料相殺は6か月分の限度を超えていないか、敷金の共益債権化は弁済額の範囲内かを検証4. 不当な相殺は否認・異議で更生財団を守る
時効(請求できる期限):相殺できるのは第138条1項の債権届出期間内に限り、かつ債権と債務が同期間の満了前に相殺適状になっていることが要件。期間は更生手続開始決定で定められ公告される。1日でも徒過すると更生計画によらない相殺権は失われる。起算点は開始決定で告知される届出期間の初日(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条の相殺は、互いに債権債務を持つ者の相殺期待(相殺の担保的機能)を保護する趣旨であり、書面性等の形式要件は不要だが、債権届出期間内という時的限界と賃料6か月分の上限、49条の相殺禁止により債権者平等との均衡が図られると解する
改正沿革 AI による整理
- 平成14年(2002年)全部改正 旧会社更生法(昭和27年法律第172号)を全面改正した現行会社更生法(平成14年法律第154号)の制定により、相殺権の規律が現行の体系に整理された。賃料債務の6か月分相殺と敷金の共益債権化の枠組みもこの体系下にある。施行後の個別改正の有無・回数は要人的検証
改正の年表
- 1.平成14年(2002年) 改正:旧会社更生法(昭和27年法律第172号)を全部改正した現行会社更生法(平成14年法律第154号)の制定により、相殺権の規律が現行の体系に整理された。賃料6か月分相殺と敷金の共益債権化の枠組みもこの体系下にある。施行後の個別改正の有無・回数は要人的検証
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める