この法律は、近年における国民の食生活をめぐる環境の変化に伴い、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むとともに、食料安全保障の確保にも資する食育を推進することが緊要な課題となっていることに鑑み、食育に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定めることにより、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来にわたる健康で文化的な国民の生活と豊かで活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。
二十一世紀における我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と身体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすることが大切である。子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。今、改めて、食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。一方、働き方が多様化し、世帯構成が変化する等社会経済情勢がめまぐるしく変化し、消費者と生産者との関係が希薄化するとともに、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎日の「食」の大切さを忘れがちである。国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向、まだ食べることができる食品の廃棄などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保や良質な食料の安定的な確保の面からも、自ら「食」の在り方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人から育まれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。こうした「食」をめぐる環境の変化の中で、国民の「食」に関する考え方を育て、健全な食生活を実現することが求められるとともに、都市と農山漁村の共生と交流を進め、「食」に関する消費者と生産者との信頼関係を構築して、地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に寄与することが期待されている。国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、「食」に関する体験活動等を通じて自然の恩恵や農林漁業者をはじめとする「食」に関わる人々の様々な活動への感謝の念や理解を深め、豊かな人間性を育みつつ、「食」に関して信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能力を身に付けることによって、心身の健康を増進する健全で充実した食生活を実践するために、今こそ、家庭、学校、保育所、職場、地域等を中心に、「食」に関わる知識又は経験を有する人材を育成し及び活用し、国民運動として、食育の推進に自ら進んで取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である。また、食育の推進に関する取組は、食育をより実効的なものとするため不断の努力を積み重ね、国民運動として、あまねく全国において、あらゆる世代の人々に対し十分に展開することが求められている。さらに、食育の推進に関する我が国の取組が、海外との交流等を通じて食育に関して国際的に貢献することにつながることも期待される。ここに、食育について、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、国、地方公共団体、国民、民間団体等の食育の推進に関する取組を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。