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法律

借地借家法

しゃくちしゃくやほう

法令番号
平成三年法律第九十号
公布日
平成三年十月四日
条数
本則91条・附則9条

法令の構成 編・章を選ぶと該当条文へ移動します

第一章
第一条(趣旨)

この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。

借地借家法 1 条は、借地権の存続期間・効力と建物賃貸借の更新・効力について民法の特則を定める本法の趣旨規定である。借地条件の変更等の裁判手続も対象とする。

よくある質問

Q · 契約書に「2 年で更新なし」と書いてあったら、本当に出ていかないといけないんですか?

普通建物賃貸借なら、その特約だけで出ていく必要はない。借地借家法 26 条で期間満了でも法定更新され、大家が更新を拒むには 28 条の正当事由が要る。借家人に不利な特約は 30 条で無効だ。業界裏話ヒント:ただし「定期借家契約」(38 条)なら話は別で、更新がなく期間満了で確実に終了する。契約時に大家から書面で説明があり、別途その旨の書面が交付されたかが分かれ目。普通借家か定期借家かを契約書で必ず確認すること。

Q · 事業用に店舗を借りている場合も、住居と同じように守られますか?

守られる。借地借家法 1 条は用途を住居に限定しておらず、建物賃貸借であれば事業用店舗も対象だ。正当事由(28 条)や法定更新(26 条)の保護が及ぶ。業界裏話ヒント:ただし事業用は立ち退き料の算定で営業補償・移転費用・のれん損失まで考慮されるため、住居より高額になりやすい。退去を求められた飲食店や小売店は、安易に応じる前に営業損失を金額化して交渉材料にすると、数百万円から数千万円単位で結果が変わる。

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第二条(定義)

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

借地権建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

借地権者借地権を有する者をいう。

借地権設定者借地権者に対して借地権を設定している者をいう。

転借地権建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定しているものをいう。

転借地権者転借地権を有する者をいう。

借地借家法 2 条は「借地権」を建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権と定義する。駐車場など建物所有を目的としない土地賃借はこの保護を受けない。

よくある質問

Q · 土地を借りて家を建てるのと、駐車場で借りるのって、法律上そんなに違うんですか?

全く違います。家を建てる目的なら借地借家法の借地権(2条)となり、存続期間は最低30年、更新拒絶には正当事由が必要、契約終了時は建物買取請求もできる。駐車場目的は建物所有ではないので、この保護は一切及ばず民法の貸借ルールだけです。業界裏話ヒント:地主側はあえて「資材置場」「駐車場」と契約書に書いて借地借家法を回避しようとすることがある。だが実態として建物が建っていれば、書面の文言より実態が優先され借地権と認定されうる。契約書の文言と現地の実態、両方を見るのが争いの勝ち筋です

Q · 借地権って、地上権と賃借権でどっちでも同じですか?

名前は同じ借地権でも中身が大きく違います。地上権は物権で、地主の承諾なしに譲渡・転貸・抵当権設定ができ、登記も請求できる強い権利。賃借権は債権で、譲渡や転貸に地主の承諾が原則必要です(民法612条)。実際の借地のほとんどは地主が嫌がるため賃借権です。業界裏話ヒント:賃借権でも、地主が承諾しない譲渡を裁判所の許可で代替できる制度があります(借地借家法19条)。「承諾してもらえないから売れない」と諦める前に、裁判所の許可申立てという裏ルートがある

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第二章
第一節
第三条(借地権の存続期間)

借地権の存続期間は、三十年とする。

ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

借地借家法 3 条は、借地権の存続期間を 30 年と定める。契約で 30 年より長い期間を定めればその期間によるが、30 年より短い定めは無効となり、最低 30 年が保障される。

よくある質問

Q · 土地を貸すとき、契約書に「5年で返してもらう」と書けば本当に5年で戻ってきますか?

戻ってきません。3条は存続期間を最低30年と定め、9条によりこれより借地人に不利な特約は無効です。「5年」と書いても法律上は30年に引き直されます。業界裏話ヒント:短期間で確実に土地を返してほしいなら、普通借地権ではなく『定期借地権』(22条)や『事業用定期借地権』(23条)を選ぶしかない。この設計を契約時に組まないと後からは絶対に変えられず、多くの地主が普通借地権で貸して半世紀後に後悔する

Q · 借地権って、土地を借りているだけなのに相続できるんですか?

できます。借地権は財産権で、相続・売買・贈与の対象になります。被相続人が借地上に家を建てて住んでいれば、借地権が遺産として承継されます(民法896条)。業界裏話ヒント:相続税の評価では借地権は『借地権割合』(国税庁の路線価図に記載、おおむね30〜90%)で評価され、思った以上に高額になる。一方で地主への名義書換料(承諾料)が必要なケースもある。相続前に借地権割合と承諾料の有無を確認しておかないと、相続時に現金が足りず慌てる(最新の改正状況をご確認ください)

Q · 建物が古くなって取り壊したら、借地権も消えてしまいますか?

建物の滅失だけで借地権が当然に消えるわけではありません。存続期間中なら借地権は継続し、再築も原則可能です(7条で一定の場合に期間延長も)。ただし第三者対抗力は建物登記に依存するため(10条)、建物がない期間は新地主などに対抗できなくなるリスクがあります。業界裏話ヒント:建物滅失後は土地に『建物を新築する旨の掲示』をしておくと一定期間は対抗力が維持される(10条2項)。これを知らないと、取り壊しの隙に土地を買った第三者へ借地権を主張できなくなる落とし穴がある

Q · 30年経ったら必ず土地を返さないといけませんか?

いいえ。30年は最低の存続期間で、満了しても借地人が更新を請求し、または使用を継続すれば、地主に正当事由がない限り契約は更新されます(5条・6条)。最初の更新は20年、以降10年ごとです。業界裏話ヒント:地主が更新を拒むための『正当事由』はハードルが高く、通常は相当額の『立退料』とセットでなければ認められない。借地人側は満了が来ても慌てて出る必要はなく、建物を使い続けることが最大の防御になる

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第四条(借地権の更新後の期間)

当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。

ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

借地借家法 4 条は、借地契約の更新後の存続期間を更新の日から 10 年(借地権設定後の最初の更新は 20 年)と定める。これより短い特約は無効となる。

よくある質問

Q · 借りた当初は30年だったのに、なぜ更新したら10年に減るんですか?

当初の存続期間は最低30年(3条)だが、更新後は10年に短縮される。ただし借地権設定後の最初の更新だけは20年だ(4条)。地主と借地人の利益調整のためで、当事者がより長い期間を合意すればそれが優先する。業界裏話ヒント:多くの借地人は『最初の更新が20年』という優遇を見落とす。一度目と二度目の更新では保障期間が倍違うので、自分が何度目の更新かを記録しておくと交渉で効く

Q · 契約書に『更新後の期間は5年』と書いてサインしてしまいました。もう手遅れですか?

手遅れではない。9条により、借地借家法の規定に反して借地権者に不利な特約は無効になる。『更新後5年』は法定の10年より短く借地人に不利なので無効となり、10年(初回20年)が適用される。業界裏話ヒント:地主が用意した契約書には借地人に不利な短期条項がしれっと入っていることがある。サイン済みでも諦めず、弁護士はまずこの強行規定違反を探す

Q · 地主が『更新しない』と言えば、出ていくしかないんですか?

いいえ。建物がある借地で借地人が更新を求める、または使用を継続する場合、地主が更新を拒むには正当事由(6条)が必要だ。地主自身の土地使用の必要性、双方の事情、立退料の提供などを総合判断する。業界裏話ヒント:『更新しない』という地主の一言には法的拘束力がない。正当事由のハードルは高く、立退料を積んでも認められないことが多い。まず正当事由の有無を確かめてから動く

Q · 更新できる借地と、できない借地があると聞きました。違いは何ですか?

普通借地権は本条が適用され更新されるが、定期借地権(22条以下)は契約で定めた期間が満了すれば更新されず土地を返還する。一般定期借地権は50年以上が条件だ。業界裏話ヒント:1990年代以降の新規借地は定期借地権が主流。契約書に『定期借地権』『更新しない』と明記されていれば本条は使えない。契約類型を最初に確認することが、後の誤解を防ぐ

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第五条(借地契約の更新請求等)

借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。

ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。

借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。

転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。

借地借家法 5 条は、借地権の存続期間が満了しても、借地権者の更新請求があり建物が存在する限り、従前と同一条件で契約が更新されたとみなす。地主の異議には正当事由が必要となる。

よくある質問

Q · 更新請求をしないと、契約は切れて出ていかないといけないんですか?

必ずしもそうではありません。5 条 2 項により、更新を請求しなくても、建物を残したまま土地の使用を続ければ、地主が遅滞なく異議を述べない限り従前と同じ条件で更新されたものとみなされます。業界裏話ヒント:実務では、満了後も賃料を払い続け、地主がそれを受け取っていれば、黙示のうちに法定更新が固まっていることが多い。地主が『契約は切れた』と言い張っても、賃料を受領していた事実が借地人の強力な武器になる

Q · 地主が「立退料を払うから出ていけ」と言えば、従うしかないんですか?

いいえ。立退料は 6 条の正当事由を補う一要素にすぎず、それだけで明け渡しを強制できるわけではありません。地主側の土地使用の必要性など本体の事情が乏しければ、立退料を提示されても拒める余地があります。業界裏話ヒント:正当事由が弱いほど、裁判所が明け渡しを認めるために要求する立退料は高くなる。つまり地主が高額を提示してくること自体が、地主側の事情が弱いサインのこともある。即答せず、まず正当事由の強さを見極める

Q · 建物がかなり古くて朽ちかけていても、更新の盾は使えますか?

建物が現に存在していれば 5 条の『建物がある場合』に当たり、更新請求の対象になります。ただし建物の朽廃・滅失で実体が失われると盾を失う可能性があります。業界裏話ヒント:老朽化を理由に自分から取り壊すと、その瞬間に更新の前提が消える。建て替えを考える場合は、借地権の存続条件や地主の承諾の要否を確認してから動くのが鉄則。順番を間違えると居住権ごと失う

Q · 更新が認められたら、次は何年住めるんですか?

借地借家法 4 条により、最初の更新後の存続期間は 20 年、それ以降の更新は 10 年とされています(当事者でより長い期間を定めることも可能)。一度更新されれば、地主は次の満了まで再び正当事由の壁に直面します。業界裏話ヒント:更新は一度きりの延命ではなく、長期の居住基盤の確保。地主にとっては取り戻しの機会が大きく後ろにずれるため、満了が近いタイミングこそ双方の交渉が動きやすい(最新の改正状況をご確認ください)

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第六条(借地契約の更新拒絶の要件)

前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

借地借家法 6 条は、地主が借地の更新を拒む異議に「正当の事由」を要求する。双方の土地使用の必要性を土台に、従前の経過・土地の利用状況・立退料の申出を総合考慮して判断する。

よくある質問

Q · 地主が高い立退料を出してきたら、もう従うしかないんですか?

従う義務はありません。借地借家法 6 条で立退料はあくまで正当事由を補完する要素で、土台にあるのは地主自身の土地使用の必要性です。地主が土地を切実に必要とする事情を示せなければ、立退料がいくら高くても更新拒絶は認められにくい。業界裏話ヒント:地主の自己使用の必要性が弱いほど、関門を越えるために積む立退料は高くなる構造です。逆に言えば、地主の必要性の弱さを見抜けば、提示額をさらに引き上げさせる交渉余地がある。最初の提示で即答しないのが鉄則

Q · 正当事由って結局、何が決め手になるんですか?

最も重い決め手は、地主と借地人それぞれが土地を使う必要性の比較です。借地借家法 6 条はこれを筆頭に挙げ、次に従前の経過(地代支払い状況など)と土地の利用状況、最後に立退料の申出を考慮すると定めます。業界裏話ヒント:裁判例では、双方の必要性が拮抗するケースで立退料が勝敗を分けることが多い。つまり必要性に明確な差があれば立退料は出る幕がなく、差が小さいときだけ立退料が効いてくる。自分の必要性を具体的に立証できるかが、立退料交渉の前段階で勝負を決める

Q · 借りているのが土地じゃなくて店舗(建物)なんですが、同じ話ですか?

構造は似ていますが、根拠条文が異なります。建物賃貸借の更新拒絶・解約申入れの正当事由は借地借家法 28 条が定め、こちらも建物使用の必要性を土台に、従前の経過や立退料を考慮する点は共通です。業界裏話ヒント:店舗の場合は営業補償が立退料に大きく上乗せされる傾向があり、特に長年営業して固定客がついている店ほど補償額が膨らむ。大家が「更新しない」と言ってきても、営業実績そのものが交渉力になることを知っておく

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第七条(建物の再築による借地権の期間の延長)

借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。

ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。

借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。

ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。

転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第一項の規定を適用する。

借地借家法 7 条は、存続期間満了前に建物が滅失し再築された場合、地主の承諾があれば承諾日または築造日から 20 年間借地権が延長されると定める。無断再築では延長されない。

よくある質問

Q · 地主に無断で建て替えたら、借地契約は解除されてしまうんですか?

再築自体が直ちに解除事由になるとは限りませんが、契約に増改築禁止特約がある場合は、無断再築が解除や違約の問題になりえます。さらに 7 条の承諾がなければ、再築しても借地期間は一切延長されません(7 条 1 項)。業界裏話ヒント:実務では、増改築禁止特約があっても地主が承諾を不当に拒む場合は、裁判所の許可(借地借家法 17 条)で再築できる道があります。地主の「ダメだ」が最終回答とは限りません

Q · 承諾料っていくらくらい払うものなんですか?相場はありますか?

法律に金額の定めはなく、当事者の合意次第です。実務上の目安として更地価格の数 % 程度(建て替え承諾料)が一つの相場とされますが、地域や個別事情で大きく変わります(最新の相場はご確認ください)。業界裏話ヒント:承諾料は「払うのが当然」ではなく交渉対象です。みなし承諾(7 条 2 項)を使えば、地主が異議を述べない限り承諾料なしで延長が成立する余地がある。通知のタイミングが交渉力を左右します

Q · 1992 年より前から借りている土地です。この 7 条は使えますか?

原則として使えません。1992 年 8 月 1 日より前に設定された借地権には旧借地法が適用されます(借地借家法附則)。旧借地法にも再築による期間延長の規定はありますが、要件や効果が異なります。業界裏話ヒント:自分の借地が新法か旧法かを知らない借地人は驚くほど多い。契約書の日付一枚で適用ルールが丸ごと変わります。建て替えを考えたら、まず弁護士や司法書士に契約の起点を確認してもらうのが第一歩です

Q · 更新前と更新後で、なぜそんなに扱いが違うんですか?

更新後は、借地関係が一度仕切り直された後だからです。更新前の再築は 7 条で借地人に有利なみなし承諾が使えますが、更新後の建物滅失・再築は 8 条が適用され、借地人に解約申入権が生じる一方、地主側の対応も変わるなど、バランスが調整されています。業界裏話ヒント:更新が近い借地人は、再築のタイミングを更新前にずらすだけで、使える法的武器(みなし承諾)が手に入る。タイミング設計は弁護士が真っ先に検討するポイントです

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第八条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)

契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から三月を経過することによって消滅する。

第一項に規定する地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利は、第二項に規定する地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利を制限する場合に限り、制限することができる。

転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第二項の規定を適用する。

借地借家法 8 条は、更新後に借地上の建物が滅失した場合、借地権者が地上権の放棄や賃貸借の解約を申し入れることができ、その日から 3 か月で借地権が消滅すると定める。

よくある質問

Q · 家が火事で焼けたら、借地はもう自動的に終わるんですか?

自動では終わりません。更新後の滅失でも、あなたが地上権の放棄か解約の申し入れをして初めて、その日から 3 か月で借地権が消滅します(8 条 1 項・3 項)。何もしなければ借地は残り、地代の支払い義務も続きます。業界裏話ヒント:この解約権は「更新後」の滅失に限られる。最初の存続期間中の滅失だと 7 条の再築ルールが働き、扱いが正反対になる。まず自分の契約が更新後かどうかを確認するのが先決

Q · 更新後に家が壊れたから、新しい家を建て直してもいいですよね?

建てられますが要注意です。地主の承諾なく残存期間を超えて存続する建物を再築すると、今度は地主が解約や地上権消滅を請求できます(8 条 2 項)。承諾を得れば 7 条で期間延長の余地もあります。業界裏話ヒント:承諾なしの再築は『居座り目的』と見られ、地主に解約のカードを渡す。再築前に必ず書面で承諾を取る。口頭の承諾は後で『言った言わない』の泥沼になる

Q · 借地を又貸ししていて、又借りの人が勝手に建て直したらどうなりますか?

その再築は、あなた(借地人)自身の再築とみなされます(8 条 5 項)。転借人が勝手に再築すれば、その責任はあなたに跳ね返り、地主から解約を申し入れられる立場になります。業界裏話ヒント:転貸借では転借人の行動が借地人の地位を直撃する。又貸し契約書に『再築は事前承諾を要する』と明記しておかないと、自分の知らぬ間に借地権を失う火種になる

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第九条(強行規定)

この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。

借地借家法 9 条は、借地権の存続期間や更新に関する第 1 節の規定に反し、借地人に不利な特約を無効とする。借地人に有利な特約は有効で、定期借地権には適用されない。

よくある質問

Q · もう契約書にサインしちゃったんですけど、今さら『無効』なんて言えるんですか?

言えます。9 条は、あなたの同意があっても借地人に不利な特約を無効とする強行規定で、契約自由の原則よりこちらが優先します。ただし無効になるのは第 1 節(存続期間・更新・正当事由)に関する不利な特約に限られ、すべての条項が無効になるわけではありません。業界裏話ヒント:地主側が「合意したじゃないか」と強く出るのは、9 条を知らない借地人が大半だからです。片面的強行規定の存在を口にした瞬間、相手が本当に分かっている弁護士をつけているかどうかが見えてくる。多くの地主側は、ここで一歩引きます

Q · 地主が『定期借地だから更新はない』と言ってます。これも 9 条で無効にできますか?

それはできない可能性が高いです。定期借地権(22 条以下)は更新がないことを前提とする別制度で、9 条が守る第 1 節の射程外だからです。ただし定期借地権には公正証書等の書面要件や説明義務があり、それを欠けば普通借地と扱われ 9 条が復活する余地があります。業界裏話ヒント:「定期借地」と言われても、契約書が要件を満たしていないケースは実務で珍しくありません。まず契約形態が本当に定期借地として有効に成立しているかを専門家に確認する。形式不備があれば、普通借地として 9 条の保護を取り戻せる

Q · 借地人に『有利』な特約も、対称で考えると無効になっちゃうんですか?

なりません。9 条は『借地人に不利なもの』だけを無効とする片面的強行規定です。存続期間を法定の 30 年より長くする、更新条件を借地人に有利にするといった特約は完全に有効です。業界裏話ヒント:これを知っていると交渉で攻めに転じられます。地主に不利だからと無効にされる心配がないので、契約時に借地人有利の条項を盛り込めるだけ盛り込む。地主側が「公平に」と均す主張をしてきても、法律上その必要はありません

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第二節
第十条(借地権の対抗力)

借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。

ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。

借地借家法 10 条は、借地権者が借地上に自己名義で登記した建物を所有していれば、借地権の登記がなくても借地権を第三者に対抗できると定める。建物が未登記または他人名義なら対抗力は認められない。

よくある質問

Q · 建物の登記って、所有権の登記までしないとダメですか?表示登記だけじゃ弱いですか?

表題登記(表示登記)だけで対抗力は認められます(最判昭和50.2.13)。所有権保存登記まで備える必要はありません。業界裏話ヒント:所有権保存登記には登録免許税がかかるため、コストを惜しんで表題登記で止めている人は多い。それでも肝心の盾は手に入っている。逆に未登記のまま放置した建物はこの盾を一切持たないので、相続や増改築のタイミングで必ず登記まで済ませておくべき

Q · 節税のために家を子供名義で登記してたんですが、これって何か問題ありますか?

借地権の対抗力という点では致命的です。建物が借地権者本人の名義でないと、新しい地主に借地権を対抗できません(最大判昭和41.4.27)。家族名義でも他人名義として扱われます。業界裏話ヒント:贈与税対策や相続対策で安易に子供名義にすると、地主の代替わり・売却時に立ち退きリスクが跳ね上がる。税理士は税金の話はしても、この対抗力の落とし穴までは説明しないことが多い。名義変更の前に借地かどうかを必ず申告する

Q · 地主が土地を売っちゃった後でも、ずっと住み続けられるんですか?

建物の登記が、新しい地主が土地の所有権を取得(登記)するより前にされていれば住み続けられます(民法177条の対抗関係)。逆に建物が未登記のうちに土地を買われ先に登記されると対抗できません。業界裏話ヒント:地主が突然『底地を売った、出ていけ』と迫る手口は明治の昔から地震売買と呼ばれ、本条の前身(建物保護法)はこれを潰すために生まれた。慌てて応じる前に、自分の建物登記の日付と新地主の登記の日付、どちらが先かを確認するだけで形勢が変わる

Q · 火事で家が焼けたら、その時点で借地権も対抗力も消えてしまうんですか?

すぐには消えません。建物の滅失後、土地の見やすい場所に建物を特定する事項・滅失日・再築する旨を掲示すれば、対抗力は維持されます(10条2項)。ただし滅失日から2年以内に再築・登記しないと失効します。業界裏話ヒント:この2年の掲示は、火災や取り壊しのあと建て直しに時間がかかる借地人を守る救済策。だが掲示を出し忘れて放置すると、その隙に地主が土地を第三者に売って明渡しを迫る余地が生まれる。罹災したらまず掲示、これが鉄則

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第十一条(地代等増減請求権)

地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。

ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。

ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

借地借家法 11 条は、地代が租税や地価の変動で不相当になったとき、当事者が将来に向けて地代の増減を請求できると定める。借地人に不利な減額しない特約は無効である。

よくある質問

Q · 地主が値上げを通知してきたら、その金額を払わないと追い出されますか?

追い出されません。協議が調わない間は、あなたが相当と認める額(通常は従来の地代)を払い続ければ債務不履行になりません(11 条 2 項)。ただし増額を正当とする裁判が確定したら、不足分に年一割の利息を付けて払う必要があります。業界裏話ヒント:「相当と認める額」をゼロや極端に低い額にすると、後で誠実に払っていないと評価され不利になる。従来額をきっちり払い続けるのが鉄則。

Q · 契約書に『地代は減額しない』と書いてサインしました。もう減額請求はできませんか?

できます。借地借家法 11 条の減額請求権は強行規定で、これに反して借地人に不利な不減額特約は無効です(サブリース判例、最判平成 15.10.21)。逆に「一定期間増額しない」特約は有効です(11 条 1 項ただし書)。業界裏話ヒント:契約書に不減額条項があっても諦めないこと。地主や仲介業者はこの条項が無効になりうると積極的には教えない。土地価格が下がった局面では専門家に相談する価値がある。

Q · 話し合いがまとまらないとき、すぐ裁判を起こせますか?

起こせません。地代増減請求の訴訟は調停前置主義で、まず簡易裁判所に調停を申し立てる必要があります(民事調停法 24 条の 2)。調停を飛ばして訴訟を提起すると、原則として調停に付されます。業界裏話ヒント:調停は非公開で柔軟、不動産鑑定士の評価も活用される。いきなり訴訟より時間も費用も抑えられることが多い。調停を面倒な前段階と侮らず、ここで決着させるのが実務の定石。

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第十二条(借地権設定者の先取特権)

借地権設定者は、弁済期の到来した最後の二年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。

前項の先取特権は、地上権又は土地の賃貸借の登記をすることによって、その効力を保存する。

第一項の先取特権は、他の権利に対して優先する効力を有する。

ただし、共益費用、不動産保存及び不動産工事の先取特権並びに地上権又は土地の賃貸借の登記より前に登記された質権及び抵当権には後れる。

前三項の規定は、転借地権者がその土地において所有する建物について準用する。

借地借家法 12 条は、地主が弁済期の到来した最後の二年分の地代等について、借地人が所有する建物の上に先取特権を有すると定める。効力の保存には地上権または土地賃貸借の登記が必要となる。

よくある質問

Q · 土地を貸しているんですが、地代を滞納されたら相手の家を取り上げられるんですか?

取り上げる(所有権を奪う)のではなく、建物を競売にかけて売却代金から優先弁済を受けられます(借地借家法 12 条 1 項)。ただし回収できるのは弁済期の来た最後の二年分の地代等だけです。業界裏話ヒント:多くの地主はこの先取特権の存在自体を知らず、滞納が何年も積み上がってから弁護士に相談します。その時点では古い滞納分は担保から外れて回収不能。二年という射程を知っているかどうかで、回収できる金額が文字通り変わる

Q · 先取特権があれば、銀行の抵当権より先に取れるんですよね?

いいえ、必ずしも先ではありません。12 条 3 項但書で、借地の登記より前に登記された抵当権・質権には劣後します。共益費用、不動産保存・工事の先取特権にも負けます。業界裏話ヒント:借地上の建物には住宅ローンの抵当権が付いていることが多く、その抵当権が借地登記より古ければ、地主の先取特権は実質的に紙くずになる。競売しても配当が銀行に吸われて手取りゼロ、というのが実務でよくある結末です

Q · また貸し(転貸)されている場合でも、地主の私に権利はありますか?

あります。12 条 4 項が転借地権者の建物にも先取特権を準用します。又貸しの構造でも、最終的に土地の上に建つ建物に対して地主の担保は届きます(借地借家法 12 条 4 項)。業界裏話ヒント:転貸を許可するとき、地主は「又貸し先が滞納したら回収できない」と不安になりがちですが、12 条 4 項があるので担保自体は確保されている。むしろ問題は転借人の建物にも先行抵当権がないかで、許可前に確認するのが玄人の対応です

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第十三条(建物買取請求権)

借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。

前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。

借地借家法 13 条は、借地契約の更新がないとき、借地権者が地主に建物を時価で買い取れと請求できる建物買取請求権を定める。形成権のため地主は拒めない。

よくある質問

Q · 借地の契約が切れたら、建てた家は自費で取り壊して返さなきゃいけないんですよね?

いいえ。契約の更新がないとき、あなたは地主に建物を時価で買い取れと請求できます(借地借家法13条1項)。取り壊して更地で返すのは、この権利を使わなかった場合の話です。業界裏話ヒント:地主や仲介業者がこの権利を借地人に積極的に説明することは、まずありません。知らないまま解体費用まで払って出ていく人が後を絶たない

Q · 時価っていくらになるんですか? 借地権の価値も上乗せされますか?

時価は建物そのものの価格に、その場所にあることの利益(場所的利益)を加味して算定します。ただし借地権そのものの価格は含まないとするのが判例の立場です(最判昭和35.12.20の趣旨)。業界裏話ヒント:この線引きで査定額が大きく変わるため、場所的利益まで含めた鑑定評価書を不動産鑑定士に作らせるかどうかが、最終的に受け取る金額を左右する

Q · 地主が『買い取らない』と突っぱねたら、結局どうにもならないんじゃ?

突っぱねられません。買取請求権は形成権で、あなたが請求した瞬間に売買契約が成立します(借地借家法13条1項)。地主の同意は不要です。代金を払わないなら、あなたは代金支払いまで建物に居座れます(留置権、民法295条)。業界裏話ヒント:この留置権こそ最大の武器。土地を早く使いたい地主ほど、居座られると困るので代金交渉に応じてくる

Q · 地主の承諾なしに建て替えた建物でも、買い取ってもらえますか?

買取請求自体はできます。ただしその建物が残存期間を超えて存続するものとして地主の承諾なく新築された場合、裁判所は地主の請求により代金支払いに相当の期限を与えられます(借地借家法13条2項)。業界裏話ヒント:つまり一括では回収できず分割や猶予になりうる。建て替えは必ず地主の承諾を書面で取ってから。承諾の有無が回収スピードを決める

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第十四条(第三者の建物買取請求権)

第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

借地借家法 14 条は、借地上の建物を取得した第三者が、地主が賃借権の譲渡を承諾しないとき、地主に建物を時価で買い取るよう請求できると定める。この買取請求権は形成権である。

よくある質問

Q · 地主が『絶対に買い取らない』と言い張ったら、買取請求は無効になりますか?

なりません。14 条の買取請求権は形成権で、あなたが請求の意思表示をした時点で、地主の意思に関係なく建物の売買契約が時価で成立します。地主に拒否権はなく、残る争いは代金額だけです。業界裏話ヒント:地主側の弁護士は、まず『買取請求の要件を満たしていない(譲渡に当たらない、承諾を求めていない等)』という入口論で争ってきます。だから請求する側は、譲渡承諾を書面で求めて拒否された経緯を必ず証拠化しておく。この一手の有無で勝負が入口で決まる

Q · 時価って、誰がどうやって決めるんですか?

当事者の合意がなければ、最終的には裁判所が不動産鑑定士の評価などをもとに認定します。基本は建物単体の価値ですが、借地権が付かない状態での評価になり、更地価格や借地権価格とは別物です。業界裏話ヒント:実務では地主側が『借地権なしの建物だけだから安い』と主張し、取得者側は『現に使える建物だ』と高く主張して大きく開く。鑑定を双方が別々に取ると評価額が倍近く違うこともある。早期に信頼できる鑑定士を押さえた側が交渉を主導する

Q · 競売で借地上の建物を落札しました。14 条と 20 条、どっちを使えばいいですか?

目的が逆です。14 条は『建物を地主に買い取らせて手を引く』ための権利、20 条は『裁判所の許可で借地権を維持し建物を使い続ける』ための制度です。建物を使いたいなら 20 条、地主と関わらず現金化したいなら 14 条。業界裏話ヒント:実務では 20 条の許可申立てをしつつ、交渉の場で 14 条の買取をちらつかせる二段構えが定石。地主は『許可が出れば承諾料も取れず借地人が居座る』と『建物を買わされる』の板挟みになり、任意の承諾に応じやすくなる

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第十五条(自己借地権)

借地権を設定する場合においては、他の者と共に有することとなるときに限り、借地権設定者が自らその借地権を有することを妨げない。

借地権が借地権設定者に帰した場合であっても、他の者と共にその借地権を有するときは、その借地権は、消滅しない。

借地借家法 15 条は、借地権を他の者と共有する場合に限り、地主が自分の土地に自己の借地権を持つことを認める。共有が続く限り混同(民法 179 条)で消滅しない。

よくある質問

Q · 借地権付きのマンションを買うんですが、地主が同じ建物の部屋を持ってるのって普通なんですか?

普通です。借地借家法15条が認める自己借地権で、地主が他の住戸所有者と共同で借地権を持つ場合に限り、自分の土地に自分の借地権を持てます。これがないと売れ残り住戸の借地権が混同(民法179条)で消えてしまいます。業界裏話ヒント:登記簿に地主名が借地権者として出ていても異常ではなく、共有要件を満たす正常な姿。逆に地主が単独になっていたら混同が起きていないか確認する価値がある。

Q · もし将来、地主がそのマンションを全部買い取ったら、私が買った借地権はどうなりますか?

あなたが住戸を持ち続ける限り、あなたの借地権は別個に存在し、地主の動きで勝手に消えることはありません。消える可能性があるのは地主自身の自己借地権で、地主が全戸を取得して単独になれば混同で消滅します。業界裏話ヒント:あなたが本当に警戒すべきは混同ではなく、借地権の存続期間(借地借家法3条)の満了と更新の可否。住み続けられるかはそちらで決まる。

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第十六条(強行規定)

第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

借地借家法 16 条は、第 10 条・第 13 条・第 14 条に反する特約で借地権者または転借地権者に不利なものを無効とする片面的強行規定である。借地人に有利な特約は有効に残る。

よくある質問

Q · 契約書に「建物は無償で撤去して返す」と書いてサインしちゃったんですが、もう無理ですよね?

無理とは限りません。その特約が建物買取請求権(借地借家法 13 条)を実質的に奪い、借地人であるあなたに不利なものなら、16 条によって無効になります。サインの有無は結論を左右しません。業界裏話ヒント:地主や一部の業者は、このひな形条項が無効になりうることを知っていても自分からは言いません。『契約書に書いてあるでしょう』と言われたら、それは無効を主張できる典型場面だと考えてよい

Q · どんな借地でも建物買取請求権って守られるんですか?

いいえ、ここが落とし穴です。一般の普通借地権では 16 条が買取請求権の放棄特約を無効にしますが、事業用定期借地権(23 条)など定期借地の類型では、買取請求権を排除する特約が法律上認められています。業界裏話ヒント:契約名が『定期借地権設定契約』『事業用定期借地』になっているかを真っ先に確認すること。普通借地のつもりが定期借地だったために、16 条の保護が及ばないケースが実際にある。契約の『種類』を見誤ると、守られるはずの権利が最初から存在しない

Q · 地主に有利な特約は無効になるのに、借地人に有利な特約はそのまま残るって本当ですか?

本当です。16 条は『借地権者又は転借地権者に不利なもの』だけを無効とする片面的強行規定です。借地人に有利な合意(例えば買取価格を時価より高くする約束)は有効に残ります。業界裏話ヒント:この非対称を理解していると、交渉で必要以上に譲る必要がないと分かる。地主側が『特約は無効だから全部白紙だ』と言っても、あなたに有利な部分まで消えるわけではない。どの条項が落ちてどれが残るかを切り分けて主張するのが要点

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第三節
第十七条(借地条件の変更及び増改築の許可)

建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

裁判所は、前二項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

裁判所は、前三項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。

転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第一項から第三項までの裁判をすることができる。

裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

借地借家法 17 条は、地主が借地条件の変更や増改築を拒んでも、協議が調わなければ裁判所が承諾に代わる許可を出せると定める。裁判所は対価として承諾料を命じることが多い。

よくある質問

Q · 増改築の許可をもらうのに、地主にいくら払えばいいんですか?

増改築の承諾料は更地価格のおおむね三パーセント前後、木造から鉄筋への条件変更だと一割前後まで上がることもあります(17条2項・3項の「財産上の給付」)。額は鑑定委員会が個別事情で算定するので幅があります(最新の相場はご確認ください)。業界裏話ヒント:地主が自分から提示してくる承諾料は相場より高いことが多い。借地非訟を申し立てれば鑑定委員会が客観的に算定するので、結果的に安くなるケースがある。地主の言い値で即決しないことが肝心

Q · 普通の裁判みたいに何年もかかるんですか?

借地非訟は通常の民事訴訟ではなく非訟事件で、勝ち負けを争うより裁判所が後見的に妥当な解決を決める手続です(借地借家法41条以下)。期間は事案により半年から一年程度が目安で、鑑定委員会の評価を挟む分、争点の多い訴訟より見通しが立てやすい。業界裏話ヒント:非訟だから地主が一切応じなくても手続は進む。地主の無視は借地人にとってむしろ好都合なことがあり、協議が調わない事実さえ示せれば前に進められる

Q · 地主ですが、借地人の申立てを完全に拒否できないんですか?

完全には拒否できません。借地人が17条の要件、たとえば土地の通常の利用上相当な増改築などを満たせば、裁判所は地主の承諾に代わる許可を出せます(2項)。ただし地主は承諾料の額や他の条件変更を主張できます(3項)。業界裏話ヒント:地主が『鑑定委員会の意見を聴く前に和解しよう』と持ちかけてくる場合、相場より高い承諾料を狙っていることがある。鑑定委員会の意見(6項)を待ってから判断した方が、適正額に落ち着きやすい

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第十八条(借地契約の更新後の建物の再築の許可)

契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

前条第五項及び第六項の規定は、第一項の裁判をする場合に準用する。

借地借家法 18 条は、更新後に残存期間を超える建物を新築するやむを得ない事情があり地主が承諾しないとき、裁判所が借地権者の申立てで承諾に代わる許可を与えられると定める。

よくある質問

Q · 承諾料って結局いくら払うことになるんですか?

裁判所が財産上の給付として命じる承諾料(18 条 1 項後段)は、一般に更地価格の数%(更新後の建て替えで概ね数%前後)が目安ですが、事案ごとに鑑定委員会が算定します(最新の相場状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:任意交渉で地主が提示する承諾料は、裁判所の相場より高いことが多い。借地非訟になれば中立の鑑定委員会が額を決めるので、地主が法外な額を吹っかけてきたら「なら裁判所に決めてもらいます」が効く一言になる

Q · 地主が「更新後の建て替えは一切認めない」って契約書に書いてあったら、もう無理ですよね?

そうとは限りません。18 条 1 項は、地主が地上権消滅請求や解約申入れをしない旨を定めた場合を除き、と規定します。逆に言えば単なる「建て替え禁止特約」だけなら、裁判所の許可で乗り越えられる余地があります。業界裏話ヒント:借地借家法は借地人保護を基本思想とし、借地人に一方的に不利な特約は無効と判断されることがある。「建て替え禁止」の一文を額面通り諦める前に、その特約が本当に有効か、18 条の許可で乗り越えられないかを弁護士に確認する価値がある

Q · 建て替えの許可って、申し立てたら必ず下りるんですか?

必ずではありません。18 条 2 項は、建物の状況、滅失があれば滅失に至った事情、借地の従前の経過、地主・借地人双方が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を裁判所が考慮すると定めます。地主側に強い自己使用の必要があれば許可されないこともあります。業界裏話ヒント:許可の可否は「やむを得ない事情」の立証の厚みで決まる。老朽化の客観資料(耐震診断・修繕見積もり)を揃えた申立てと、口頭の主張だけの申立てでは結論が変わる。申立て前の証拠固めが勝負どころ

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第十九条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)

借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。

ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

借地借家法 19 条は、地主が借地上建物の賃借権譲渡を承諾しない場合でも、地主に不利益がなければ裁判所が承諾に代わる許可を与えられると定める。承諾料を条件にできる。

よくある質問

Q · 承諾料って結局いくら取られるんですか?

譲渡の場合、借地権価格のおおむね1割前後が実務上の目安です。19条1項は裁判所が利益の衡平のため財産上の給付を条件にできると定め、6項で鑑定委員会の意見を聴いて適正額を判断します。業界裏話ヒント:裁判所まで行くと鑑定費用や数か月の時間がかかるので、相場を把握したうえで地主と任意に承諾料を合意した方が、総コストでは安く済むことが多い。申立ては地主を交渉のテーブルに着かせる切り札として使うのが上手いやり方です

Q · 地主が許可された後で、やっぱり自分が買い取ると言い出せますか?

できますが、タイミングに厳格な制限があります。19条3項の介入権は、裁判所が定める期間内に「建物の譲渡及び賃借権の譲渡を自ら受ける」と申し立てる必要があり、この期間を過ぎると行使できません。業界裏話ヒント:地主が高い承諾料を要求してきたとき、借地人側から「では介入権を使って買い取ってください」と返すと、買い取る資力や意思のない地主は要求を引っ込めます。介入権は地主の武器であると同時に、借地人の交渉カードにもなります

Q · うちの借地でも19条は使えますか?地上権だと聞いた気もして。

19条が使えるのは賃借権の場合だけです。地上権は物権なので、地主の承諾なしに自由に譲渡でき、許可の申立て自体が不要です。まず登記簿で自分の権利の種類を確認してください。業界裏話ヒント:古い借地は賃借権が大半ですが、まれに地上権が設定されていることがあります。地上権だと判明すれば、承諾料も借地非訟も一切不要で売却できるので、確認を怠ると払わなくていい承諾料を払う羽目になります

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第二十条(建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可)

第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、借地条件を変更し、又は財産上の給付を命ずることができる。

前条第二項から第六項までの規定は、前項の申立てがあった場合に準用する。

第一項の申立ては、建物の代金を支払った後二月以内に限り、することができる。

民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)第十九条の規定は、同条に規定する期間内に第一項の申立てをした場合に準用する。

前各項の規定は、転借地権者から競売又は公売により建物を取得した第三者と借地権設定者との間について準用する。

ただし、借地権設定者が第二項において準用する前条第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

借地借家法 20 条は、競売・公売で借地上の建物を取得した第三者が地主の承諾を得られないとき、裁判所が承諾に代わる許可を与えられると定める。申立ては代金支払後 2 か月以内に限られる。

よくある質問

Q · 競売で建物を買えば、土地もセットで付いてくるんじゃないんですか?

いいえ。競売で移るのは建物の所有権だけで、土地を使う借地権の譲渡には地主の承諾が別途必要です(民法612条)。承諾が得られなければ借地借家法20条で裁判所の許可を求めることになります。業界裏話ヒント:借地上の建物が競売で安く出るのは、まさにこの承諾リスクが価格に織り込まれているから。安さの裏に必ず理由があり、20条の許可が取れる見込みを事前に読める人だけが、その割安を本当の利益に変えられる

Q · 地主に「承諾料を払えば認める」と言われました。払わないとダメですか?

必ずしも地主の言い値に従う必要はありません。20条1項は、当事者間の利益の衡平を図るため必要なときに裁判所が財産上の給付(承諾料)を命じることができると定めます。つまり金額は最終的に裁判所が判断します。業界裏話ヒント:承諾料は借地権価格の1割前後とされることが多いが、これは交渉と裁判所の裁量で動く。地主の最初の提示額をそのまま飲む必要はなく、借地非訟手続の中で適正額へ落ち着かせるのが定石

Q · 申立ての2か月って、いつから数えるんですか?

建物の代金を支払った後2か月以内です(20条3項)。落札した日でも、売却許可決定の日でもなく、代金を現実に納付した日が起算点です。業界裏話ヒント:この起算点の勘違いで権利を失う人が後を絶たない。納付日を1日でも取り違えると申立て却下のリスクがある。代金を納付した瞬間にカレンダーへ2か月後の期限を書き込み、逆算して動くのが鉄則

Q · 地主が「自分で買い取る」と言い出しました。拒否できますか?

原則として拒否は難しいです。20条2項が準用する19条3項により、地主には介入権、つまり裁判所が定める対価で建物と借地権を自ら買い取る権利があります。業界裏話ヒント:介入権は地主の最終防衛ラインだが、買取価格は裁判所が鑑定等で決めるため、地主が安く買い叩くことはできない。落札者から見れば、許可が出ても地主の介入で手放す可能性があると最初から織り込んでおくべき

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第二十一条(強行規定)

第十七条から第十九条までの規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

借地借家法 21 条は、17 条〜19 条の裁判所許可制度に反し借地権者に不利な特約を無効とする片面的強行規定である。増改築禁止特約があっても借地非訟で許可を得る道は残る。

よくある質問

Q · 契約書に「増改築は一切禁止」ってハッキリ書いてあるんですけど、それでも建て替えられるんですか?

増改築禁止の特約そのものは有効ですが、17条はそれでも裁判所が許可を出せる制度を定めており、21条がこの許可制度を借地人から奪う特約を無効にします。つまり禁止特約があっても、借地非訟で許可を取る道は残る。業界裏話ヒント:実務では、裁判所が許可と引き換えに「承諾料」(更地価格の数%程度)の支払を条件とすることが多い。地主はこれを知っているので、訴訟前に相当額の承諾料で任意承諾に応じるケースが少なくない。最初から非訟をちらつかせると交渉が早い

Q · 地主が譲渡を承諾してくれないと、借地上の自分の家って売れないんですか?

いいえ。19条が、地主が承諾しない場合に裁判所が代わりに譲渡を許可する「代諾許可」を定めており、21条がこれを奪う特約を無効にします。建物と借地権をセットで第三者に売る道は残されています。業界裏話ヒント:地主には「介入権」(19条)があり、自分が建物を買い取ると申し出ることもできる。だが買取価格は時価。借地人にとっては誰が買おうと適正価格で現金化できる構造なので、不利ではないことが多い

Q · 片面的強行規定って、結局どういう意味なんですか?

借地人に不利な特約だけを無効にし、有利な特約は有効のまま残す、一方通行の保護という意味です(21条)。例えば「承諾不要で建て替え可」のような借地人に有利な特約はそのまま生きます。業界裏話ヒント:契約書の特約を見るとき、プロは「これは借地人に有利か不利か」だけを判定する。不利なら21条で消えるので恐れる必要がなく、交渉の主導権はむしろ借地人側に移る

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第四節
第二十二条(定期借地権)

存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。

前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。

借地借家法 22 条は、存続期間 50 年以上を条件に更新・延長・建物買取請求を排除する一般定期借地権を定める。満了時は更地で返還し、特約は公正証書等の書面か電磁的記録を要する。

よくある質問

Q · 定期借地権付きのマンションって、買っても損なんですか?

一概に損ではない。土地代がない分2割前後安く都心の好立地に住め、固定資産税も建物分だけで済む。問題は出口だ。22条の一般定期借地権は満了で更地返還が原則なので、年数が経つほど資産価値が下がり、最後はゼロに近づく。業界裏話ヒント:プロが見るのは「残存期間と築年数の差」。残り20年を切った定借物件は売却も賃貸も急に難しくなり、ローンも組みにくい。住む年数が読めている人向けの商品だと割り切れるかが分かれ目

Q · 50年後、本当に建物を壊して返さないといけないんですか?

本条の一般定期借地権で更新なし・買取請求なしの特約があれば、原則として自費で解体し更地で返す。地主が同意すれば再契約や継続もありうるが、それは権利ではなく交渉次第。業界裏話ヒント:解体費は木造でも100万円超、RC造なら数百万円かかる。契約時に「満了時の解体費を誰がどう積み立てるか」を取り決めていない物件が驚くほど多い。買う前に解体費の見積もりを取り、その分を実質コストに足して損得を計算するのが鉄則

Q · 契約書に「更新しない」と書いてあれば、口約束でも有効ですか?

無効になりうる。本条は更新・延長・買取請求を排除する特約について、公正証書による等の書面、2022年からは電磁的記録によることを要件にしている。書面の体裁を満たさない特約は、9条・16条の強行規定により借地権者に不利な特約として効力を否定され、普通借地権として更新が認められる余地がある。業界裏話ヒント:地主側のミスでこの書面要件を欠くと、半永久的に返ってこない普通借地権に化けることがある。設定する側こそ公正証書を強く勧める理由がここにある

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第二十三条(事業用定期借地権等)

専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。

専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。

前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

借地借家法 23 条は、専ら事業用の建物所有を目的に存続期間 10 年以上 50 年未満で設定する借地権につき、更新・延長・買取請求のない特約を認める。設定は公正証書が必須で、居住用は対象外。

よくある質問

Q · 事業用定期借地権って、普通の定期借地権と何が違うんですか?

一般定期借地権(22条)は用途を問わず、期間50年以上、書面で設定できます。事業用定期借地権(23条)は専ら事業用に限り、期間10年以上50年未満、しかも公正証書が必須です。業界裏話ヒント:公正証書が要るのは23条だけ。実務でも22条の感覚で「書面でいい」と思い込み、公証役場を飛ばす事故が起きる。設定するなら、必ず公正証書を経たかどうかを最初に確認する

Q · 契約期間が終わったら、建物はどうなるんですか?

原則として借地人が建物を取り壊し、更地にして地主へ返します。23条では13条の建物買取請求権が排除されるため、地主に「建物を買い取れ」と請求できません。業界裏話ヒント:この取壊し費用が満了時に重くのしかかる。出店企業は契約時に解体費を見込んだ計画を立てないと、最後の最後で利益が消える。地主側は更地返還の条項を明記しておくと後の紛争を防げる

Q · 店舗の上に住居を作る複合ビルでも使えますか?

使えません。23条は「専ら事業の用に供する建物(居住用を除く)」が条件で、一部でも居住用が混じると対象外になります。賃貸マンションや社宅はもちろん不可。業界裏話ヒント:テナントビルでも、オーナー住戸や管理人室の扱いが争点になることがある。居住性の線引きは設計段階で専門家に確認しないと、スキーム全体が普通借地権へ倒れる

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第二十四条(建物譲渡特約付借地権)

借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。

前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。

第一項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。

借地借家法 24 条は、設定後 30 年以上を経た日に建物を地主が相当の対価で買い取り、借地権を消滅させる建物譲渡特約付借地権を定める。更地返還の一般定期借地と異なり建物は存続する。

よくある質問

Q · 建物譲渡特約付借地権って、普通の定期借地権と何が違うんですか?

出口が正反対です。22 条の一般定期借地権は 50 年以上で期間満了時に建物を取り壊して更地で返すのに対し、24 条は 30 年以上で建物を取り壊さず地主に譲渡して借地権を消滅させます。建物が無駄にならない点が特徴です。業界裏話ヒント:実務では 22 条と 24 条を組み合わせ、節目で譲渡特約を発動させる設計も使われます。どの定期借地を選ぶかで税務上の評価や 30 年後の現金需要が大きく変わるので、契約類型の名前を契約前に必ず確認してください

Q · 30年後に地主が建物を買い取れなかったら、借地はそのまま続くんですか?

続きません。24 条 1 項の特約は「相当の対価で譲渡する」ことをあらかじめ定めるもので、譲渡が実行されれば借地権は消滅します。地主の資金不足は借地人を守る根拠にはなりません。業界裏話ヒント:だからこそ住み続けたい借地人の本当の武器は 2 項の継続請求権です。譲渡で所有を失っても、請求すれば期間の定めのない賃貸借が成立したとみなされ、家賃に不服があれば裁判所が決めます。所有から賃借への移行を支える安全網です

Q · 建物を借りているだけの店子ですが、大家の借地権が消えたら追い出されますか?

ただちに追い出されるわけではありません。24 条 2 項は、建物の賃借人で消滅後も使用を継続している者が請求したときも、地主との間で期間の定めのない賃貸借が成立したとみなすと定めています。あなた自身に継続の道があります。業界裏話ヒント:店子はこの権利を知らないことが多く、大家の都合で当然に出ていくものと諦めがちです。請求という能動的な一手を打てるかどうかで、営業を続けられるかが分かれます

Q · 特約付きで貸した後、更新なしの賃貸に切り替えることはできますか?

できます。24 条 3 項は、特約がある場合に借地権者または建物賃借人と地主が 38 条 1 項の定期建物賃貸借契約を結んだときは、2 項のみなし賃貸借ではなくその定期借家の定めに従うとしています。業界裏話ヒント:これは地主にとって重要な出口設計です。2 項のみなし賃貸借は期間の定めがなく終了させにくいですが、3 項で定期借家に切り替えれば期間満了で確実に明渡しを受けられます。回収後の運用自由度が段違いになります

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第二十五条(一時使用目的の借地権)

第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。

借地借家法 25 条は、一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合に、存続期間や更新、建物買取請求権など借地人保護規定の適用を除外する規定である。

よくある質問

Q · 契約書に『一時使用』ってハンコ押しちゃったら、もう普通の借地としては主張できないんですか?

いいえ、主張できる余地があります。第25条の一時使用は契約書の文言ではなく、設定時に一時使用が客観的に明らかだったかで判断されます。長期間にわたり建物を建てて使い続けていれば、文言が『一時使用』でも通常の借地として保護される可能性があります。業界裏話ヒント:地主側の弁護士は一時使用を盤石にするため工事工程表や短期の特約まで仕込んでくる。借主側は契約後に利用が長期化・常態化した事実、増築、住民票、事業実態を集めるほど、文言を覆しやすくなる

Q · 一時使用の借地だと、建物を建てても出ていくとき買い取ってもらえないって本当ですか?

本当です。通常の借地なら期間満了時に建物買取請求権(第13条)で地主に建物を時価で買い取らせられますが、第25条が適用される一時使用ではこの権利も外れます。建てた建物は自費で撤去し、更地で返すのが原則です。業界裏話ヒント:だからこそ一時使用で借りるなら、建てるのは撤去前提の仮設・プレハブにとどめる。うっかり立派な建物を建てると、撤去費用を丸ごとかぶった上に、その建物の存在自体が『一時使用ではない』証拠として地主に不利に働く皮肉な事態にもなる

Q · どれくらいの期間なら『一時使用』として認められるんですか? 3年は長すぎますか?

明確な年数基準はありません。第25条の判断は期間の長短だけでなく、利用目的、設備の性質、当事者の事情を総合します。数年でも工事や博覧会など目的が明確に一時的なら認められ、逆に1年や2年でも目的が曖昧なら否定されえます。業界裏話ヒント:実務では『期間が長い=一時使用否定』と単純化されがちだが、本当の決め手は目的の一時性が客観的に明白かどうか。工事完了やイベント終了という終わりが構造的に決まっている利用ほど、期間が多少長くても一時使用が通りやすい

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第三章
第一節
第二十六条(建物賃貸借契約の更新等)

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。

ただし、その期間は、定めがないものとする。

前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

借地借家法 26 条は、賃貸人が満了の 1 年前から 6 月前までに更新拒絶を通知しなければ、建物賃貸借が従前と同一条件で自動更新される法定更新を定める。

よくある質問

Q · 契約期間が終わったのに大家から何も連絡がありません。出ていかなくていいんですか?

出ていく必要はありません。普通借家契約では、大家が満了の 1 年前から 6 月前までに更新拒絶の通知を出さなければ、26 条 1 項により従前と同じ条件で自動的に更新されます。更新後は期間の定めのない契約になります。業界裏話ヒント:この「連絡が来ない」状態は、むしろ借家人にとって最も安全な状態です。不安になって自分から「更新の手続きはどうすれば」と問い合わせると、大家に家賃値上げや更新料の口実を与えることがある。黙って住み続けるのが一番強い

Q · 大家が「建て替えたいから更新しない」と言ってきました。従うしかないですか?

従う必要はありません。更新拒絶には 28 条の正当事由が必要で、単なる建て替え希望だけでは足りないのが実務の扱いです。多くの場合、相応の立ち退き料の提示があって初めて正当事由が補完されます。業界裏話ヒント:大家側は「正当事由が要る」ことを借家人が知らないと踏んで、立ち退き料なしで退去を迫ってくることが多い。あなたが 28 条を持ち出した瞬間、交渉のテーブルに立ち退き料が乗る。知っているかどうかで数十万から数百万円が動く

Q · 更新料を払わないと更新できないと言われました。本当ですか?

更新料は法律上の義務ではなく、契約書に更新料の定めがある場合に限り問題になります。定めがあっても、法定更新の場合は更新料を支払う義務がないとする裁判例もあり、実務上、解釈が分かれている論点です。業界裏話ヒント:合意更新なら更新料条項は有効とされやすいが、26 条の法定更新では「更新の合意」自体がないため、更新料請求の根拠が弱まる。更新料を請求されたら、それが合意更新か法定更新かをまず確認する

Q · 定期借家契約と普通借家契約、契約書を見てもどっちか分かりません。どこで見分けますか?

定期借家契約(38 条)は、書面で契約し、かつ「更新がない」ことを事前に独立した書面で説明することが要件です。この説明書面がなければ、定期借家としては無効で普通借家として扱われ、26 条の法定更新が適用されます。業界裏話ヒント:大家が定期借家の手続きを正しく踏んでいないケースは意外と多い。「定期借家だから出ていけ」と言われても、契約時に独立した説明書面を受け取った記憶がなければ、普通借家として争える余地がある

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第二十七条(解約による建物賃貸借の終了)

建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。

前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

借地借家法 27 条は、賃貸人の解約申入れから 6 か月の経過で建物賃貸借が終了すると定める。ただし 28 条の正当事由を欠く解約申入れは効力を生じない。

よくある質問

Q · 大家から「半年後に出ていって」と言われました。本当に出ないとダメですか?

出る義務が当然に生じるわけではない。27 条で 6 か月という期間は定まるが、28 条が大家の解約申入れに「正当事由」を要求している。大家自身の使用の必要性や立退料の提示などがなければ、通知は効力を持たない。業界裏話ヒント:大家が出す通知書には正当事由が書かれていないことが多い。理由を文書で問い返すだけで、正当事由が薄い大家は途端に立退料交渉に切り替えてくる。まず「理由を書面でください」と返すのが第一手だ

Q · 立退料って必ずもらえるんですか?相場はいくらくらい?

必ずもらえる固定の権利ではない。立退料は 28 条の正当事由を「補完」するもので、大家の事情だけでは正当事由が足りないとき、金銭で埋め合わせて明渡しを認めてもらう仕組み。金額は居住用か事業用か、契約期間、営業補償、移転実費で大きく変わる(最新の裁判例の傾向をご確認ください)。業界裏話ヒント:占有している側が圧倒的に強い。退去してしまうと立退料はほぼ消える。住み続けながら交渉するのが、金額を引き上げる唯一の正攻法だ

Q · 「更新を断られた」のと「解約を申し入れられた」のは違うんですか?

土俵が違う。期間の定めがある契約の終了は 26 条(更新拒絶、期間満了の 1 年前から 6 か月前までの通知)、期間の定めがない契約は 27 条(解約申入れから 6 か月)で処理される。どちらも 28 条の正当事由が必要な点は共通する。業界裏話ヒント:更新を重ねた契約が法定更新で「期間の定めのない」状態に変わっていることは実務でよくある。自分がどちらの条文の土俵にいるかを取り違えると、通知の有効性の判断を丸ごと間違える

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第二十八条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

借地借家法 28 条は、大家による更新拒絶や解約申入れには正当事由が必要と定める。双方の使用の必要性を主軸に判断され、足りない分は立退料で補完される。

よくある質問

Q · 大家が「老朽化で危ないから建て替えたい」と言ってきたら、出ていくしかないですか?

原則として、それだけでは出ていく必要はありません。建物の老朽化や建て替え希望は正当事由の一要素にはなりますが、それ単独では足りず、あなた側の使用の必要性(28 条が筆頭に挙げる事情)と天秤にかけられます。本当に倒壊の危険があるレベルか、補修で足りるかも問われます。業界裏話ヒント:大家が『建て替え』を持ち出すときは、実は更地にして売却・高収益物件化したい本音が裏にあることが多い。その場合、立退料は住居でも賃料の半年から 1 年分、店舗なら営業補償込みで数百万円以上になることもある。建て替えと言われたら、まず立退料の話に持ち込むのが定石です

Q · 立退料っていくらもらえるんですか?決まった相場はありますか?

法律上の固定額はなく、ケースごとに大きく変わります。住居なら引っ越し費用+新居の敷金礼金+賃料差額補償で賃料の数か月分、店舗・事務所なら営業補償・移転費用・のれん代・内装費が加わり数百万円から数千万円になることもあります。28 条は『財産上の給付の申出』として立退料を正当事由の補完要素と位置づけています。業界裏話ヒント:立退料は『正当事由が弱いほど高くなる』という逆相関があります。大家側の事情が薄いほど、金で埋め合わせる額が膨らむ。だから安易に最初の提示額で妥協せず、大家の正当事由がどれだけ弱いかを見極めてから交渉するのが鉄則です

Q · 更新拒絶の通知が来たけど無視していたら、契約はどうなりますか?

大家に正当事由がなければ、契約は従前と同じ条件で自動的に更新されます(法定更新、借地借家法 26 条)。あなたが居座っても不法占拠にはならず、堂々と住み続ける権利があります。ただし更新後は期間の定めのない契約になる点に注意。業界裏話ヒント:大家が正当事由なしに明渡訴訟を起こしても、裁判所はまず勝たせません。逆に正当事由が微妙なケースでは、裁判所が『立退料○○円の支払と引換えに明渡せ』という引換給付判決を出すことがある。つまり裁判になっても、あなたは手ぶらで追い出されるのではなく、相応の金銭を受け取って出る形になることが多いのです

Q · 契約書に「更新しない」と書いてあったら、正当事由は関係なくなりますか?

普通の賃貸借契約では、借家人に不利な特約は無効になります(借地借家法 30 条、強行規定)。ただし『定期建物賃貸借契約』(38 条)を正式な手続で結んでいた場合は別で、その場合は満了で更新なく終了し、28 条の正当事由も立退料も原則発生しません。業界裏話ヒント:定期借家として有効になるには、契約とは別の書面で『更新がなく期間満了で終了する』旨を事前に説明・交付する厳格な要件があります(38 条)。この書面交付が漏れていれば、たとえ契約書に『定期』と書いてあっても普通借家として扱われ、28 条の保護が復活します。退去を迫られたら、まず定期借家の手続が正しく踏まれているかを確認してください(最新の改正状況をご確認ください)

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第二十九条(建物賃貸借の期間)

期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

借地借家法29条は、1年未満の建物賃貸借を期間の定めがない賃貸借とみなし(1項)、民法604条の存続期間50年上限を建物賃貸借に適用しない(2項)と定める。

よくある質問

Q · 短い契約のほうが、借り手にとって不利なんじゃないんですか?

逆です。1年未満の普通建物賃貸借は29条1項で『期間の定めがない賃貸借』とみなされ、大家がやめさせるには正当事由(28条)と6か月前の通知(27条)が要ります。借り手側はいつでも3か月前の申入れで抜けられる(民法617条)。業界裏話ヒント:大家が『短期だから足元を見られる』と思っている借り手ほど、実は法律上は強い立場にある。この非対称を知っているかどうかで、退去交渉のスタート地点がまるで違う

Q · 大家から『定期借家だから契約満了で出ていけ』と言われました。本当に出ないとダメですか?

まず契約が本当に定期借家かを確認してください。定期建物賃貸借(38条)は、契約とは別に『更新がなく期間満了で終了する』旨を記した書面を事前に交付し、口頭で説明する手続が必須です。これを欠くと普通借家になり、正当事由がなければ出る必要はありません。業界裏話ヒント:この事前説明書面の交付漏れは実務で意外に多く、漏れていれば『定期のつもりだった』という大家の主張は法的に崩れる。契約一式を引っ張り出して、その一枚があるか先に探す

Q · 工場や倉庫を50年以上の長期で借りたいのですが、そんな契約は法律上できるんですか?

できます。民法604条は賃貸借の存続期間を50年に制限していますが、29条2項はこの規定を建物賃貸借に適用しないと定めています。だから建物の賃貸借なら50年を超える期間も有効です。業界裏話ヒント:大型設備投資の回収を前提にした超長期契約は、この2項があって初めて成り立つ。逆に言えば、土地そのものの賃貸借(借地)は別ルールなので、敷地ごと長期で押さえたいなら借地権の設計が必要になる。建物を借りるのか土地を借りるのかで、使う条文が変わる

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第三十条(強行規定)

この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

借地借家法 30 条は、更新・解約・正当事由などを定める同法第 3 章第 1 節に反する特約で、建物の賃借人に不利なものを無効とする片面的強行規定である。

よくある質問

Q · 契約書に「更新しない」ってハッキリ書いてサインしたんですけど、それでも住み続けられるんですか?

普通借家契約であれば、その特約は借地借家法 30 条で無効になる可能性が高いです。貸主が更新を拒むには 28 条の正当事由が別途必要で、特約だけでは借主を追い出せません。サインの有無は関係ありません。業界裏話ヒント:ただし契約書に「定期借家契約」「更新がない契約」と明記され、貸主が事前に書面を交付して説明していれば、それは 38 条の定期借家で 30 条は効きません。自分の契約がどちらかを、契約書のタイトルと冒頭で必ず確認する。ここを読み違える人が一番損をする

Q · 立退料を払うって言われたら、出ていかなきゃダメですか?

立退料の提示は、貸主が 28 条の正当事由を補強するための材料の一つで、提示されたからといって必ず明け渡す義務が生じるわけではありません。正当事由が十分でなければ、立退料があっても明渡しは認められないこともあります。業界裏話ヒント:逆に、契約書に「立退料は請求しない」と書いてあっても、その特約は借主に不利なので 30 条で無効。立退料の金額は法律で決まっておらず、交渉と裁判例の相場で決まります。最初の提示額は低めに出てくるのが通例なので、即答せず相場を調べてから返事をする

Q · お店を借りてるんですけど、住居じゃなくても 30 条で守られますか?

守られます。30 条の「建物の賃借人」は住居用に限らず、店舗・事務所などの事業用建物の借主も含みます。貸主が一方的に有利な解約特約を入れていても、借主に不利な部分は無効になりえます。業界裏話ヒント:事業用は内装・設備への投資(造作)が大きいため、明渡しの際に造作買取請求(借地借家法 33 条)や営業補償が立退料交渉の重要な材料になります。住居より交渉できる金額の幅が大きいことが多い。安易に「契約書通り」と諦めず、投資額を数値化して交渉に臨む

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第二節
第三十一条(建物賃貸借の対抗力)

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

借地借家法31条は、賃借権の登記がなくても建物の引渡しがあれば、その後に建物の物権を取得した第三者に賃貸借を対抗できると定める。ただし抵当権の登記が先なら買受人には対抗できない。

よくある質問

Q · 大家が建物を売っちゃったら、敷金は誰が返してくれるんですか?

新オーナーです。建物の所有権移転とともに、敷金返還義務も新賃貸人に承継されます(民法605条の2第4項)。前の大家に「敷金は引き継いでいない」と言われても、それは内部の話で、あなたは新オーナーに直接請求できます。業界裏話ヒント:ただし退去時に家賃滞納や原状回復費があれば敷金から差し引かれる。揉めそうなら、所有権が移った時点で「敷金は新オーナーに承継された」と一筆もらっておくと後が楽になる

Q · 口約束で借りてるだけなんですけど、それでも新しいオーナーに対抗できますか?

できます。31条が要求するのは登記でも契約書でもなく、建物の引渡し、つまり実際に住んでいるという事実だけです。書面がなくても、引渡しがあれば対抗力は生じます。業界裏話ヒント:問題は揉めたときの証明です。入居日が分かる証拠、最初の家賃の振込記録、電気ガス水道の開始日、鍵の受領メールなどを残しておく。引渡しの時期はそのまま抵当権との先後判断に直結するので、日付の証拠が命綱になる

Q · 新オーナーから家賃を上げると言われました。前の契約のままじゃダメなんですか?

新オーナーは前の貸主の地位をそのまま引き継ぐので、契約をリセットして一方的に値上げすることはできません。家賃を上げるには、近隣相場や経済事情の変動という借賃増減請求(借地借家法32条)の要件が要ります。業界裏話ヒント:値上げに同意しなくても、あなたが相当と考える従前の額を払い続ければ滞納にはならない。受取を拒まれたら法務局に供託すればよく、最終的な決着は協議か調停で付ける

Q · 競売物件のアパートに住んでます。落札されたら即出て行けと言われますか?

あなたの引渡し(入居)が抵当権の設定登記より前なら、買受人に対抗でき住み続けられます。後なら対抗できませんが、民法395条で買受時から6か月の明渡猶予があります。業界裏話ヒント:登記簿の乙区で抵当権の設定日を確認し、自分の入居日と比べる。この先後一つで「住み続けられる」か「6か月で退去」かが決まる。これを知らずに通知が来た途端に即引っ越す人が、本来使えたはずの権利や猶予を捨てている

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第三十二条(借賃増減請求権)

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。

ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。

ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

借地借家法 32 条は、租税や不動産価格、近隣相場の変動で家賃が不相当になったとき、契約内容にかかわらず将来に向け借賃の増減を請求できると定める。増額しない特約があればそれに従う。

よくある質問

Q · 大家から家賃の値上げを通告されたら、断れますか?

増額するという請求そのものは大家の一方的な意思表示で効力が生じますが、いくらにするかは合意か裁判で決まります。あなたは納得できなければ自分が妥当と思う額を払い続けられます(32 条 2 項)。業界裏話ヒント:争うにはまず民事調停を経る必要があり(調停前置)、いきなり訴訟はできません。多くの借主はこれを知らず、通知に怯えて言い値を飲むか、逆に何も払わず契約解除のリスクを抱えます。正解は調停の場に相場データを持ち込むこと

Q · 値上げを拒んで今の家賃のまま払い続けて、もし裁判で負けたらどうなりますか?

増額を正当とする裁判が確定すると、それまでの不足額に年一割の利息を付けて支払う必要があります(32 条 2 項但書)。逆に大家が取りすぎていた場合も超過額に年一割を付けて返します(3 項)。業界裏話ヒント:この年一割は民法の法定利率とは別の、この条文固有の重い利率です。だから暫定額をあまりに低く見積もると、長期戦になったとき利息で痛手を負う。妥当額の見極めに鑑定を使う価値がここにあります

Q · 契約書に「家賃は減額しない」と書いてあっても、減額を求められますか?

通常の賃貸借なら求められます。減額しない特約は借主に不利なため無効とされ(借地借家法 30 条)、特約があっても 32 条の減額請求は生きています。逆に「増額しない」特約は借主に有利なので有効です(32 条 1 項但書)。業界裏話ヒント:この非対称を知らない貸主は多い。例外は定期借家(38 条)で、ここだけは賃料改定特約で 32 条自体を外せる。だから契約形態が普通借家か定期借家かを最初に確認することが分水嶺になります

Q · サブリースで家賃保証してもらっているのに、業者から減額を求められました。保証は無意味ですか?

残念ながら 32 条の減額請求はサブリース契約にも及ぶと最高裁が判断しています(最判平成 15.10.21 ほか)。「保証賃料」という文言だけでは減額を防げません。業界裏話ヒント:サブリースの勧誘で「○年家賃保証」を強調されても、それは法的に絶対の固定ではない。契約前に、減額請求の可能性と過去の減額実績を業者に確認し、書面で残しておくことが、後の紛争で効いてきます

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第三十三条(造作買取請求権)

建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。

前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。

借地借家法 33 条は、賃貸人の同意を得て付けた造作を、賃貸借終了時に時価で買い取るよう請求できると定める。ただし任意規定のため、放棄特約があれば請求できない。

よくある質問

Q · 退去するとき、自分で付けたエアコンや棚って買い取ってもらえるんですか?

大家の同意を得て付けた造作なら、借地借家法 33 条で時価での買取を請求できます。ただし二つの壁があります。設置に大家の同意があったこと、そして契約書に放棄特約がないこと。業界裏話ヒント:今の賃貸契約のほとんどに『造作買取請求権を放棄する』『原状回復として収去する』という特約が入っており、これは 37 条が 33 条を強行規定から外しているため有効です。退去時に条文を調べるより、入居時の契約書のその一行を先に確認するのが本当の勝負どころです

Q · 大家が買い取りを拒否したら、お金を受け取るまで部屋を明け渡さなくていいんですよね?

それはできません。最高裁は、造作代金債権を理由に建物全体を留置することを認めていません(最判昭和 29.1.14)。造作の代金は造作に関する債権であって、建物自体に関する債権ではないからです。業界裏話ヒント:賃借人側で『買い取るまで居座る』という戦法を期待する人は多いのですが、留置できるのは造作そのものであって部屋ではない。明渡しは明渡し、代金回収は別の訴訟で進めるのが実務です。居座りを前提に交渉を組み立てると足元をすくわれます

Q · 家賃を滞納して契約を解除された場合でも、付けた設備の買取は請求できますか?

原則できません。判例は、賃借人の債務不履行による契約解除の場合には造作買取請求権は発生しないとしています。33 条が想定するのは『期間の満了又は解約の申入れ』による正常な終了だからです。業界裏話ヒント:滞納で追い出される局面では、設備代の回収はほぼ望めないと考えるべきです。だからこそ高額な設備投資をする店舗テナントは、滞納に陥る前の段階で、設備を別途リース扱いにする、敷金で相殺を組むなど、33 条に頼らない回収設計を契約段階で仕込んでおきます

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第三十四条(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)

建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。

借地借家法34条は、原賃貸借が期間満了や解約申入れで終了する場合、賃貸人が転借人に通知しなければ終了を対抗できず、通知後6か月で転貸借が終了すると定める。

よくある質問

Q · サブリース会社が潰れたら、私は今の部屋から追い出されるんですか?

すぐには追い出されません。建物オーナーがあなた(転借人)に終了通知をしない限り、終了をあなたに対抗できず(借地借家法34条1項)、通知後も6か月の猶予があります(同2項)。業界裏話ヒント:サブリース破綻時、オーナーはむしろ入居者にそのまま住み続けてもらい直接契約に切り替えたい場合が多い。慌てて出る前に「直接契約できますか」と聞くと、退去せず住み続けられることがある

Q · 6か月って書いてあるけど、大家が「来月出てけ」と言ったら従うしかないんですか?

従う必要はありません。借地借家法34条2項は、通知日から6か月の経過ではじめて転貸借が終了すると定めています。口頭で「来月」と言われても、書面通知の日から6か月が法律上の期限です。業界裏話ヒント:この6か月は最低保障であって、立退料の交渉とは別物。6か月を主張しつつ引っ越し費用相当の立退料も同時に求めるのが実務の定石。時間とお金、両方取りにいける

Q · 私とオーナーは直接契約してないのに、なんでオーナーから通知が来るんですか?

転貸借では、オーナーと転借人の間に直接の賃貸借契約はありませんが、借地借家法34条がオーナーに通知義務を課し、両者を手続上つなげています。転借人の居住を守るための特別な仕組みです。業界裏話ヒント:民法613条により、オーナーは転借人へ直接賃料を請求することもできる。契約はなくても法律上の権利義務でつながっており、「契約してないから無関係」は通用しない

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第三十五条(借地上の建物の賃借人の保護)

借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から一年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。

前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。

借地借家法 35 条は、借地権満了で土地を明け渡す建物賃借人が、満了を 1 年前まで知らなかった場合に限り、知った日から最長 1 年の明渡し猶予を裁判所に請求できると定める。

よくある質問

Q · 大家とちゃんと契約してるのに、なんで地主の都合で追い出されるんですか?

あなたの賃借権は、大家が持つ借地権という土台の上に成り立っているからです。借地権が満了すれば、その上の建物を維持する権原も消え、建物賃借人も土地を明け渡す立場になります(借地借家法35条1項)。業界裏話ヒント:この巻き込まれを事前に避ける唯一の方法は、契約前に土地の登記簿を取って「地上権」や「賃借権」の登記がないか確認すること。借地上の建物だと分かれば、借地権の残存期間を大家に確認してから契約を判断できる

Q · 猶予期間中の家賃はどうなるんですか?

猶予期間中も賃貸借は継続するので、賃料の支払義務は残ります(借地借家法35条2項は「期限が到来することによって終了する」と定め、それまでは契約が存続)。つまり猶予は「タダで居座れる期間」ではなく「家賃を払いながら次を探せる期間」です。業界裏話ヒント:この期間中、地主と建物賃借人の間に直接の賃貸借関係はなく、賃料は引き続き大家(借地権者)に払うのが原則。誰に払うべきか曖昧になりがちなので、猶予が決まった時点で支払先を書面で確認しておく

Q · 立退き料はもらえないんですか?

35条が与えるのは金銭補償ではなく、明渡しの「猶予期間」です。立退き料は別問題で、大家(借地権者)との賃貸借契約や合意の中で交渉する話になります。業界裏話ヒント:35条の猶予と、大家への立退き料請求は別ルートで同時に進められる。猶予で時間を稼ぎつつ、大家とは契約終了に伴う補償を交渉する。地主に対しては猶予、大家に対しては補償、と相手を分けて考えると整理しやすい

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第三十六条(居住用建物の賃貸借の承継)

居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。

ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。

借地借家法 36 条は、居住用建物の賃借人が相続人なく死亡した場合、事実上夫婦・養親子と同様の同居者が賃借権を当然に承継すると定める。ただし相続人がいれば適用されない。

よくある質問

Q · 内縁の妻ですが、夫の部屋にこのまま住めますか? 大家は出ていけと言っています。

夫に相続人が一人もいなければ、36 条 1 項であなたが当然に賃借人の地位を承継するので、大家の承諾なしに住み続けられます。相続人がいる場合は 36 条は使えず、相続人の賃借権を援用して大家に対抗します(最判昭和 42.2.21)。業界裏話ヒント:大家は事情を知らない人にほど強気に退去を迫ります。承継は法律上当然に生じるものだと一言伝えるだけで、相手の態度は大きく変わる

Q · 同性のパートナーでも、この条文は使えるんですか?

条文は「事実上夫婦と同様の関係」と書いており、実態が夫婦同然なら同性パートナーも対象になりうると考えられています。ただし実務上、解釈が分かれる論点で、関係の実態をどう立証するかが勝負を分けます。業界裏話ヒント:自治体のパートナーシップ証明書、公正証書(合意契約書)、長年の同居を示す住民票や連名の契約が、関係の実態を裏づける決め手になる。亡くなる前に整えておくほど後で強い

Q · 相手に未払い家賃みたいな借金があったら、それも私が払うんですか?

はい、36 条 2 項により、賃貸借から生じた債権だけでなく債務も承継した人に帰属します。住む権利だけ拾って債務は捨てる選択はできません。業界裏話ヒント:未払い家賃や原状回復費が部屋に住み続ける価値を上回るなら、死亡を知ってから一月以内に反対の意思を表示して、権利も債務もまとめて手放すのが合理的。この期限を逃すと逃げられなくなる

Q · 亡くなった相手に疎遠な兄弟がいる場合、私はもう住めないんですか?

その場合 36 条は適用されませんが、住居を失うとは限りません。賃借権は兄弟が相続するので、あなたはその相続人の賃借権を援用して大家の明け渡し請求を拒める、という判例ルートがあります(最判昭和 42.2.21)。業界裏話ヒント:相続人全員が相続放棄をすると「相続人不存在」に戻り、36 条の承継が復活する余地がある。相続人の有無は固定ではなく、放棄で動くことを知っているかどうかで打てる手が変わる

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第三十七条(強行規定)

第三十一条、第三十四条及び第三十五条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。

借地借家法 37 条は、対抗力・転借人保護に関する 31・34・35 条に反する特約のうち、建物の賃借人や転借人に不利なものを無効とする片面的強行規定である。

よくある質問

Q · 契約書に「オーナーが代わったら出て行く」と書いてサインしたんですが、本当に守らなくていいんですか?

従う必要がない可能性が高い条項です。借地借家法 31 条で、建物の引渡し(入居)を受けていれば新オーナーにも賃貸借を主張でき、37 条はこれに反して借主に不利な特約を無効としています。だからサインしていても効きません。業界裏話ヒント:新オーナー側の不動産業者は、無効と知った上で「契約書にある」と押してくることがある。引渡し日(鍵を受け取った日)を示す書類さえあれば、登記がなくても対抗できるので、引越し時の書類は捨てずに残しておく

Q · サブリース会社から借りていて、大家と会社の契約が切れたから来月出て行けと言われました。すぐ出ないとダメ?

原則として、すぐに出る必要はありません。借地借家法 34 条で、大本の契約が終了しても、建物のオーナーがあなた(転借人)に通知してから 6 か月経たないと転貸借は終わりません。これに反する即時退去の特約は 37 条で無効です。業界裏話ヒント:サブリース会社の破綻や撤退が増えているが、転借人がこの 6 か月ルールを知らずに慌てて退去している。通知が「いつ」届いたかが起算点なので、通知書の日付を必ず確認する

Q · 強行規定だと、契約書の特約は全部無効になってしまうんですか?

いいえ。無効になるのは借主や転借人に「不利な」特約だけです。37 条は片面的強行規定なので、借主に有利な特約(例:法律より長い猶予期間を定める)はそのまま有効です。業界裏話ヒント:だから契約書は「この特約は私に有利か不利か」で振り分けて読む。大家が善意で付けた有利な条項まで「強行規定だから無効」と勘違いして手放してしまう借主がいる。有利な特約はむしろ積極的に守らせる

Q · 借りている建物が建つ土地の賃貸借が切れるそうです。私は建物の借主ですが、いきなり追い出される?

いきなりではありません。借地借家法 35 条で、土地の賃貸借が終わることを 1 年以上前に知らなかった建物賃借人には、裁判所が最大 1 年の猶予を与えられます。これを奪う特約は 37 条で無効です。業界裏話ヒント:このケースは「借地の上の借家」という二重構造で、自分の大家(建物所有者)が土地を借りているだけだと借主は気付いていないことが多い。契約時に「この建物の敷地は借地か」を確認しておくと、いざという場面で猶予を主張できる

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第三節
第三十八条(定期建物賃貸借)

期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。

前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。

建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。

第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。

ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。

第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。

前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。

借地借家法 38 条は、書面による契約に限り契約更新のない定期借家を認める規定。賃貸人が事前に更新なしと記載した別個の書面で説明しなければ、更新排除の定めは無効となる。

よくある質問

Q · 定期借家って普通の賃貸より家賃が安いって本当ですか?

傾向としては本当です。大家は期間満了で確実に明け渡してもらえる分リスクが下がるため、家賃を抑えやすい。ただし更新がなく、再契約に応じるかは大家の自由なので、住み続けられる保証はありません(借地借家法38条1項)。業界裏話ヒント:定期借家でも再契約という形で実質的に住み続けられる場合がありますが、その際に家賃を上げられたり再契約を拒まれたりするリスクは契約書に書かれません。長く住む前提なら、再契約の条件を口頭でなく書面で確認しておくと立場が変わる

Q · 契約書に『定期借家』と書いてあっても無効になることがあるんですか?

あります。大家が契約前に、契約書とは別の書面で『更新がなく期間満了で終わる』ことを説明していなければ、定期借家の定めは無効です(38条3項、5項)。その場合は普通借家として扱われ、あなたは簡単には追い出されません。業界裏話ヒント:最高裁(最判平成24.9.13)は、この事前説明書面は契約書と一体の書面では足りず、別個独立の書面でなければならないとしています。契約書の中の一条項として書かれているだけなら定期借家は成立していない可能性がある。契約書を見返して、独立した説明書面があったか確認する価値がある

Q · 定期借家でも途中で出たくなったら解約できますか?

原則として期間中の中途解約はできませんが、例外があります。居住用で床面積200平方メートル未満の物件なら、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情がある場合、解約を申し入れられ、申入れから1月で契約は終了します(38条7項)。業界裏話ヒント:これに反して『中途解約一切不可』とする特約は、借主に不利なので無効です(38条8項)。契約書にそう書いてあっても効きません。逆に200平方メートル以上や事業用には7項が及ばないので、その場合は契約書の中途解約条項が勝負を決める

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第三十九条(取壊し予定の建物の賃貸借)

法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合において、建物の賃貸借をするときは、第三十条の規定にかかわらず、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定めることができる。

前項の特約は、同項の建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない。

第一項の特約がその内容及び前項に規定する事由を記録した電磁的記録によってされたときは、その特約は、同項の書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

借地借家法 39 条は、取壊しが明らかな建物について取壊し時に賃貸借が終了する特約を認める。特約は取壊し事由を記載した書面又は電磁的記録によらなければ無効となる。

よくある質問

Q · 定期借地のマンションって、期限が来たら本当に追い出されるんですか?

はい。定期借地権(借地借家法22条)は更新がなく、期限到来で土地を更地に戻すため建物は取り壊されます。その建物を借りていた人は、39条の取り壊し特約があれば終了時に退去します。業界裏話ヒント:分譲の定期借地マンションは購入価格が安い反面、残存期間が短いほど資産価値が下がり、最後はゼロになる前提で設計されている。「安い」の正体はこの出口があるからだと知って買うかどうかで、満足度が全く変わる

Q · 取り壊すからって言われましたが、立退料はもらえないんですか?

39条の特約が有効なら、原則として立退料はありません。普通の借家なら大家は正当事由(借地借家法28条)を補完するため立退料を払うのが通例ですが、有効な39条特約はその正当事由自体を不要にします。業界裏話ヒント:ただし特約の添付書面に取り壊し事由が具体的に書かれていなければ(39条2項)特約は無効。その場合あなたは通常の借家人に戻り、立退料を要求できる。まず書面の不備を探すのが交渉の入口だ

Q · 口約束で「壊すときは出てね」と言われただけなんですが、これも有効ですか?

無効です。39条2項は取り壊すべき事由を記載した書面(または3項の電磁的記録)を効力要件としており、口頭の合意は特約として成立しません。業界裏話ヒント:この場合あなたは通常の建物賃貸借として扱われ、契約期間が満了しても法定更新(借地借家法26条)が働き、大家は正当事由がなければ更新を拒めない。「言われただけ」なら、まだあなたは守られている側だ

Q · 契約書には書いてあったけど署名したとき気づかなかった、後から無効にできますか?

気づかなかったこと自体は無効理由になりません。書面に署名した以上、原則として特約は有効です。争えるのは書面の事由記載不備(39条2項)や、そもそも取り壊しが明らかでなかった場合などに限られます。業界裏話ヒント:消費者契約の文脈では説明義務違反を主張する余地もゼロではないが、39条は形式要件さえ整えば強力に機能する。だからこそ署名前のチェックが唯一の防衛線になる

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第四十条(一時使用目的の建物の賃貸借)

この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない。

借地借家法 40 条は、一時使用が明らかな建物賃貸借には法定更新や正当事由などの借家人保護規定を適用しないと定める。該当性は契約書の文言でなく客観的実態で判断される。

よくある質問

Q · 契約書に「一時使用」って書いてあったら、もう普通の借家の保護は一切受けられないんですか?

書いてあるだけでは確定しません。借地借家法40条が見るのは契約書の文言ではなく、一時使用のためであることが明らかという客観的実態です。期間が短い、目的が明確に一時的、建物が仮設的、といった事情が揃って初めて26条や28条の保護が外れます。業界裏話ヒント:大家側のテンプレ契約書には保護逃れのため安易に「一時使用」と入っていることがありますが、生活の本拠として住んでいた、期間が当初より延びた、という事実があれば普通借家と認められた裁判例があります。書いてあっても諦めない

Q · 定期借家と一時使用って何が違うんですか?どっちも更新がないですよね?

結果は似て見えますが仕組みが全く別です。定期借家(38条)は更新がない代わりに、書面交付と事前説明という厳格な手続が法律で要求されます。一時使用(40条)は、そもそもこの保護章が丸ごと適用されず、手続要件もありません。業界裏話ヒント:大家が定期借家の事前書面説明を怠ると、その契約は普通借家に転落します。一方、一時使用は手続不要で保護を外せるため、大家側が一時使用を悪用したがる動機があります。借りる側は、契約がどちらの建付けかを最初に確認すると、後の立場が全く変わる

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第四章
第四十一条(管轄裁判所)

第十七条第一項、第二項若しくは第五項(第十八条第三項において準用する場合を含む。)、第十八条第一項、第十九条第一項(同条第七項において準用する場合を含む。)若しくは第三項(同条第七項及び第二十条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第二十条第一項(同条第五項において準用する場合を含む。)に規定する事件は、借地権の目的である土地の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

ただし、当事者の合意があるときは、その所在地を管轄する簡易裁判所が管轄することを妨げない。

借地借家法 41 条は、増改築や借地権譲渡の許可など借地非訟事件を、原則として土地の所在地を管轄する地方裁判所の管轄と定める。合意があれば同所在地の簡易裁判所も管轄できる。

よくある質問

Q · 借地のもめ事って、普通に地主を訴えるのと何が違うんですか?

大きく違います。借地非訟事件(借地借家法 41 条以下)は、地主と勝ち負けを争う訴訟ではなく、裁判所に増改築や譲渡の「許可」をもらう手続です。裁判所は鑑定委員会の意見を聴いて、承諾料などの条件を定めて許可を出します。業界裏話ヒント:弁護士は、感情的に地主と全面対決するより、この借地非訟で淡々と許可を取る方が早く安く済むと知っています。訴訟だと思って身構える依頼者ほど、この手続の存在を教えると安心する。

Q · うちは借地が遠くにあるんですが、近くの裁判所で手続きできませんか?

原則できません。41 条は、借地権の目的である土地の所在地を管轄する地方裁判所と定めています。あなたの住所地ではなく、土地のある場所が基準です。ただし当事者の合意があれば、その土地の所在地の簡易裁判所で手続できる例外があります。業界裏話ヒント:遠方の借地で申し立てる場合、地元の弁護士に頼むと出張費がかさみます。土地の所在地に事務所を構える弁護士を探した方が、トータルコストは下がることが多い。

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第四十二条(非訟事件手続法の適用除外及び最高裁判所規則)

前条の事件については、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第二十七条、第四十条、第四十二条の二及び第六十三条第一項後段の規定は、適用しない。

この法律に定めるもののほか、前条の事件に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

借地借家法42条は、借地非訟事件について非訟事件手続法の一部規定の適用を除外し、手続の細目を最高裁判所規則に委ねる規定。私人間の借地紛争を簡易な非訟手続に保つ役割を担う。

よくある質問

Q · 地主が建て替えを認めてくれないんですが、もうどうしようもないですか?

いいえ。借地借家法には「借地非訟」という手続があり、増改築許可の申立て(第18条)をすれば、裁判所が地主の承諾に代わる許可を出せます。これは通常の訴訟ではなく非訟事件という簡易な手続で、第42条により検察官の関与など一般規定の一部は適用されません。業界裏話ヒント:借地非訟は弁護士費用も訴訟より抑えられることが多く、申立て自体が地主への強い交渉材料になる。多くの借地人がこの制度を知らないまま泣き寝入りしている

Q · 借地非訟の手続って、どこにルールが書いてあるんですか?

借地借家法本体に加え、第42条2項が「必要な事項は最高裁判所規則で定める」と委任しており、実際の細かな手続は借地非訟事件手続規則という最高裁判所規則に書かれています。法律だけ読んでも手続の全体像は見えません。業界裏話ヒント:条文を読んでも進め方が分からないのはこのため。実務では最高裁規則と各裁判所の運用を押さえた弁護士・司法書士に頼るのが近道で、借地非訟を扱い慣れているかどうかで申立ての通りやすさが変わる

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第四十三条(強制参加)

裁判所は、当事者の申立てにより、当事者となる資格を有する者を第四十一条の事件の手続に参加させることができる。

前項の申立ては、その趣旨及び理由を記載した書面でしなければならない。

第一項の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

借地借家法 43 条は、当事者の申立てにより、当事者となる資格を有する第三者を裁判所が借地非訟の手続に参加させる強制参加を定める。申立ての却下には即時抗告ができる。

よくある質問

Q · 強制参加って、巻き込まれる側は拒否できないんですか?

当事者の申立てを受けて、裁判所が参加させるかどうかを判断します(43条1項)。参加させられた人は、その時点で裁判の効力が及ぶ当事者になります。業界裏話ヒント:43条3項が即時抗告を認めているのは「申立てを却下する裁判」に対してだけ。参加させられた側が参加の裁判そのものに即時抗告できるとは条文上書かれておらず、不服は本案の中で争う形になりやすい。この非対称を知らないと、巻き込まれた側は出口を見失う

Q · わざわざ第三者を引き込んで、何の得があるんですか?

裁判の結論をその第三者にも及ぼし、紛争を一回で終わらせるためです。抵当権者や転借人を外したまま条件を変えると、後でその人から効力を争われる余地が残ります(43条1項)。業界裏話ヒント:借地非訟に強い弁護士は、申立書を出す前に登記簿を取り、抵当権者・転借人・共有者を洗い出して「誰を強制参加させるか」を先に設計する。これを怠ると、勝っても後から崩れる砂上の勝訴になる

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第四十四条(手続代理人の資格)

法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない。

ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を手続代理人とすることができる。

前項ただし書の許可は、いつでも取り消すことができる。

借地借家法44条は、借地非訟の手続代理人を原則弁護士に限る規定。法令上裁判上の行為ができる者は例外で、簡裁では許可により非弁護士も代理できる。

よくある質問

Q · 借地のことで困っていて司法書士に相談したんですが、裁判所まで一緒に来てもらえますか?

申立書などの書類作成は依頼できますが、借地非訟は地方裁判所の管轄(借地借家法41条)で、そこであなたの代理人として法廷に立てるのは原則弁護士だけです(44条)。司法書士は同席できても代理人にはなれません。業界裏話ヒント:司法書士に書類作成だけ頼み、出廷は本人がする「本人申立て+書類作成支援」という組み合わせは費用を大きく抑えられます。争点が単純な事案ほど、この形が効きます

Q · 会社で借りている土地の件、社内の人間が裁判所で対応することはできないんですか?

原則は弁護士だけですが、44条は「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」を例外としています。会社の支配人(商法21条、会社法11条)は登記された範囲で裁判上の行為ができるため、手続代理人になれます。業界裏話ヒント:弁護士を雇う前に、自社に登記された支配人がいないか確認する。いれば外部委任の費用をかけずに借地非訟へ対応できる場合があります

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第四十五条(手続代理人の代理権の範囲)

手続代理人は、委任を受けた事件について、非訟事件手続法第二十三条第一項に定める事項のほか、第十九条第三項(同条第七項及び第二十条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。次項において同じ。)の申立てに関する手続行為(次項に規定するものを除く。)をすることができる。

手続代理人は、非訟事件手続法第二十三条第二項各号に掲げる事項のほか、第十九条第三項の申立てについては、特別の委任を受けなければならない。

借地借家法45条は、借地非訟の手続代理人の代理権の範囲を定める。通常の手続行為は当然に行えるが、19条3項の介入権の申立て・和解・取下げには特別の委任を要する。

よくある質問

Q · 弁護士に頼めば、和解も取り下げも全部その場で決めてもらえるんですよね?

決められない行為があります。借地借家法45条2項と非訟事件手続法23条2項により、和解・申立ての取下げ・19条3項の介入権の申立てなどは、委任状に特別の委任がなければ代理人でも行えません。業界裏話ヒント:事務所のひな型は特別の委任欄が空欄のまま使われがちで、いざ和解という段階で代理人に権限がなく、本人の押印を取り直す空白の数日が生じる。契約時に埋めておくこと

Q · 介入権って地主の権利ですよね、借地人の自分には関係ないのでは?

大いに関係します。あなたが19条で譲渡許可を申し立てると、地主は19条3項の介入権を行使して自ら借地権と建物を買い取れます。その行使に地主側の特別の委任が要るかどうかが本条の論点です。業界裏話ヒント:相手方代理人の委任の範囲を早期に確認すると、相手が介入権や和解を即決できる立場にあるかが分かり、交渉の進め方を逆算して組み立てられる

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第四十六条(事件の記録の閲覧等)

当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、第四十一条の事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は同条の事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十一条第四項及び第五項の規定は、前項の記録について準用する。

借地借家法 46 条は、借地非訟事件の記録を閲覧・謄写できる者を、当事者と利害関係を疎明した第三者に限定する。通常の訴訟記録のような一般公開はされない。

よくある質問

Q · 借地付きの中古住宅を買おうと思うんですが、過去に揉めてないか裁判所で調べられますか?

借地条件の変更や増改築許可をめぐる借地非訟事件があったかは、借地借家法 46 条で記録を閲覧、謄写できます。ただし誰でもではなく、利害関係を疎明した第三者に限られます。購入予定者なら、売買交渉中であることを書面で示せば疎明になりえます。業界裏話ヒント:登記簿や重要事項説明書に借地非訟の履歴が載らないことは多い。書類上はきれいでも、裁判所記録に増改築をめぐる争いが眠っていることがある。買う前に裁判所まで足を運ぶ人はほとんどいない、そこが情報の差になる

Q · 自分が起こした借地の裁判の記録、相手以外の他人に勝手に見られませんか?

借地非訟事件の記録は通常の民事訴訟と違い、一般には公開されません(借地借家法 46 条)。閲覧できるのは当事者と、利害関係を疎明した第三者だけです。準用される民事訴訟法 91 条 5 項により、保存や執務に支障があるときも制限されます。業界裏話ヒント:通常の民事訴訟記録は誰でも閲覧できる(民事訴訟法 91 条 1 項)ため、訴訟にすると事業情報が外部に晒されやすい。借地非訟という手続を選ぶこと自体に、記録が一般非公開というプライバシー上の利点がある。手続選択の段階でこの差を意識する専門家は意外に少ない

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第四十七条(鑑定委員会)

鑑定委員会は、三人以上の委員で組織する。

鑑定委員は、次に掲げる者の中から、事件ごとに、裁判所が指定する。

ただし、特に必要があるときは、それ以外の者の中から指定することを妨げない。

地方裁判所が特別の知識経験を有する者その他適当な者の中から毎年あらかじめ選任した者

当事者が合意によって選定した者

鑑定委員には、最高裁判所規則で定める旅費、日当及び宿泊料を支給する。

借地借家法 47 条は、借地非訟事件で借地権価格や承諾料を算定する鑑定委員会を三人以上の委員で組織すると定め、委員は裁判所が事件ごとに指定する。

よくある質問

Q · 借地の値段でもめたとき、鑑定委員会って自分で選べるって本当ですか?

完全に自由ではありませんが、47 条 2 項 2 号で当事者が合意して選定した者を委員にできます。原則は地方裁判所があらかじめ選任した名簿(同項 1 号)からの指定です。業界裏話ヒント:合意による委員選定はほとんど使われていません。代理人すら名簿任せにしがちですが、専門性の高い争点では、こちらから委員候補を提案するだけで相手の出方が変わることがある。

Q · 鑑定委員会が出した金額に納得いかないとき、ひっくり返せますか?

容易ではありません。裁判所は特別の事情がない限り委員会の意見を聴く義務があり(41 条)、実務上その金額を土台に判断します。意見書の算定根拠に誤りがあれば審問で指摘し再考を促す余地はあります。業界裏話ヒント:意見書は『出てから争う』より『出る前に資料を入れる』方が効く。鑑定の基礎資料は当事者の提出物に引っ張られるので、有利な比較事例や地代相場の資料を先に出しておくのが実務の勘所。

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第四十八条(手続の中止)

裁判所は、借地権の目的である土地に関する権利関係について訴訟その他の事件が係属するときは、その事件が終了するまで、第四十一条の事件の手続を中止することができる。

借地借家法 48 条は、借地権の目的たる土地の権利関係に関する訴訟が係属するとき、その終了まで裁判所が第 41 条の借地非訟手続を中止できると定める。許可は借地権の存在が前提のためである。

よくある質問

Q · 借地非訟って早いと聞いたのに、なんで何か月も止まってるんですか?

借地権の存否などをめぐる別の訴訟が係属していると、裁判所は第48条でその訴訟が終わるまで非訟手続を中止できます。許可は借地権の存在が前提なので、存否が未確定のままでは進められないのです。業界裏話ヒント:この中止は地主側にとって、譲渡や増改築を合法的に遅らせる手段になりえます。申立て前に借地権の存在を確定させておけば、この一手を封じられる。

Q · 地主がわざと訴訟を起こして手続を止めてる気がするんですが、対抗できますか?

中止の前提は『借地権に関する権利関係の訴訟その他の事件』が係属していることです。争点が実体を欠く形だけの別訴なら、裁判所がそれを見抜き引き延ばしと評価することがあります。業界裏話ヒント:弁護士は中止が出たらまず別訴の争点が本物かを見極めます。本物なら早期決着へ、形だけなら裁判所にその性質を指摘して中止の必要性を争う。動き方が真逆になる。

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第四十九条(不適法な申立ての却下)

申立てが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、審問期日を経ないで、申立てを却下することができる。

借地借家法 49 条は、借地非訟の申立てが不適法で補正できない場合に、裁判所が審問期日を経ずに申立てを却下できると定める。補正可能な不備はこの対象に含まれない。

よくある質問

Q · 申立てを却下されたら、もう建て替えの許可は一生取れないんですか?

不適法却下は「入口の形が整っていない」という理由での却下であり、中身(建て替えの必要性など)を否定されたわけではありません。形式の不備を直して再度申立てる道は残りますし、決定に不服なら即時抗告もできます。業界裏話ヒント:却下決定書の理由欄を読むと、何が不適法とされたかが書かれています。そこが「補正できたはずの不備」なら、整えて出し直せば通る可能性が高い。諦める前に、まず理由を冷静に読むことが分かれ道です

Q · 借地非訟って普通の裁判と何が違うんですか? 訴状みたいに書けばいいんじゃないんですか?

借地非訟は民事訴訟ではなく非訟事件で、適用される手続ルールが別系統(非訟事件手続法)です。通常の訴状の感覚で作ると、訴訟なら許される程度のラフさが、ここでは不適法として扱われることがあります(借地借家法 17 条・19 条などの許可を求める手続)。業界裏話ヒント:借地非訟を扱い慣れていない代理人ほど、訴訟の流儀で申立書を作って入口で躓きます。依頼するなら借地非訟の取扱経験を確認するのが、却下リスクを下げる一番の近道です

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第五十条(申立書の送達)

裁判所は、前条の場合を除き、第四十一条の事件の申立書を相手方に送達しなければならない。

非訟事件手続法第四十三条第四項から第六項までの規定は、申立書の送達をすることができない場合(申立書の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。

借地借家法 50 条は、裁判所が借地非訟事件の申立書を相手方に送達すべきことを定める。送達できない場合や予納費用の不納があると非訟事件手続法が準用され、申立書は却下されうる。

よくある質問

Q · 申立書を出したのに手続が進みません。何が起きてるんですか?

送達が完了していない可能性が高いです。借地借家法50条で、裁判所は申立書を相手方に送達してから手続を進めますが、予納郵券の不足や相手方の住所の不備があると送達できず、止まります。業界裏話ヒント:申立て窓口は受け付けてくれても、送達費用の予納まで案内しないことがある。提出時に「予納郵券はいくら必要か」を書記官に確認しておくと、後の補正命令を防げる

Q · 相手(地主)がわざと郵便を受け取りません。私の申立ては無駄になるんですか?

無駄にはなりません。受取拒否も「送達をすることができない場合」に当たり、借地借家法50条2項が非訟事件手続法43条4項以下を準用します。裁判長の補正を経て、付郵便送達や公示送達で手続を進められます。業界裏話ヒント:相手が逃げているなら早めに公示送達を上申するのが定石。待っているだけだと補正期間を空費し、かえって自分の申立てが却下されるリスクが上がる

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91条の本則 / 9条の附則

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借地借家法(平成三年法律第九十号)(e-Gov法令検索)。LawPlayer より取得、https://lawplayer.com/jp/act/403AC0000000090

出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)

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本頁資料來源:e-Gov 法令検索(デジタル庁)·整理提供:法律人 LawPlayer· lawplayer.com